AB'S: In the City Night

Last Updated: Apr.4,09; Open: Mar.17,06
このページでは,AB'Sのファーストアルバム「AB'S」のIn the City Nightでのおかもっちのプレイを見ていきます。

In the City Night

Yoshihiko ANDO/ Atsuo OKAMOTO

Key: Am(/C)
Intro(1)-Intro(2)-A-B-C(サビ部)-(小間奏)-A-B-C-(小間奏)-(間奏)-C-C'-C''-Ending

Sound

ミディアム・テンポのハーフタイム・シャッフル(・・・といっていいのかな?)。ジャンルは何になるのでしょう? AOR? それともジャズ?フュージョン?ロック? Bメロのアレンジは非常にジャズっぽい感じもするんですが,ポップさがないわけでもない,私個人にはまさにクロスオーバー的な曲に思えます。ともあれ,非常に都会のオトナの哀愁あふれる超名曲で,聴けば聴くほど味が出てきます。

最初のイントロはベースとギターのみ(ストロークとバイオリン奏法の旋律)。それが急に雰囲気が変わってハーフタイム・シャッフルのリズムに合わせたベース・ソロが入ります(チョッパーが超カッコいい!)。ウラは中音域にカッティング・ギター,やや高音域にエレピ。Aメロに入ると,再び曲調が静かになります。やはりカッティング・ギターとエレピが入ってますが,全体的にサウンドはこの箇所では薄めにしてあります。ドラムのフィル後のBメロはコーラスが非常にきれいで,ベースもちょっと目立って徐々にサウンドに厚みを帯びてきます。Cメロ(サビ)はコーラスが旋律に3度上のハモりが絡むウラで更にバックコーラスが入っています。ここでは単音で入るリズム・ギターが非常に効いてます。間奏はギターがソロを担当していますが,すべての楽器が幻想的なムードを演出する構成になっています。

この曲のハイライトのひとつはコーラス。旋律がきれいなので,コーラスパートも映えます。もうひとつがベース! 直樹さんというとチョッパーのイメージが強いですが,ここでのプレイはシブくてきれいなメロディも堪能でき,NEWでのスタイルが既にこの頃からあったんだな,と実感できます。安藤さんの歌詞もいいですねー。

UP

Drum Performance

Intro(2)
ベースと合わせて弱起で前の小節の最後からドラムが入ってきます。バスドラはギターのカッティングやベースのリズムと基本的には合わせてありますが,高い音域を弾くところではベースを活かすために拍のところ以外は抜いてます。ハイハットは1・2・3・4拍目はオープン,それぞれのウラはクローズしてシャッフルのリズムに合わせてあります。「チー・チッチ」の繰り返し。最後,一旦全楽器がブレイクしますが,そのあとしっかり「間」を入れ,さらにAメロ直前の低いタムを使った「タトン!」という力を抜いた短くてシンプルなフィルが,割合ベースやスネアにインパクトがあったこの箇所のテンションを一気に下げています。この「間」とこのフィル,これはほんと,すごいです。
Aメロ部
スネア打ちがサイド・スティックになります。ハイハットはオープンがなくなってクローズしたままシャッフル・リズムで打ってます。バスドラも1・3拍目に入れてるだけで,ここではシンプル・・・ですが!Bメロに入る前に強烈に印象的なフィルを入れてます。音数を最小限に抑え,その代わりに使用タムの音域差を利用してウラにそれぞれ1発ずつ入れた後,スネアとバスドラでシャッフルに合わせたリズムに戻して次に繋げています。前に広い音域のタムを使うことでスネアの音が非常に映えて,Bメロへの展開を期待させる構成になってます。
Bメロ部
基本的には2小節単位でフレーズが作られています。スネアは,1小節目は1拍目と1拍目ウラのシャッフルビートのさらにウラ(=2拍目直前)と4拍目,2小節目は2拍目と,4拍目シャッフルビートのオモテのウラ(意味わかるでしょうか?)。キックはベースと合わせてあって,1小節目は2拍目のウラのシャッフルリズムに合わせて打って,あとは小節の変わる直前(4拍目のウラ部のウラ)に打ってます。この曲はDeja Vu同様,ハーフタイム・シャッフルの最後の音符が次のフレーズへの導入部にあたっていて(Intro(2)からAメロもそうなってます),このキックもそれと同じと考えていいと思います。で,2小節目はこの最後のアクセントのしっかり入ったキックの余韻だけで繋げ,2拍目は1小節目と同じ,そして1小節目に入っていた最後のキックはなくなります。(ひょっとするとスネア絡みでもう少しキックを入れているかもしれません。)かなりテクニカルなプレイで,ド素人の私には非常に分かりにくい構成です・・・。ハイハットはIntro(2)と同じパターン。Cメロにいく前のフィルは,この前のスネアの入れ方が変則的だったので,8ビート(といっていいのか?)で入れるスネア連打を使って,この部分のスリリングなテンションをリセットしているような感じがします。
Cメロ部
オープン・ハイハットを効かせる以外はシンプル。8小節目(フレーズの切れ目)の最後だけちょっとバスドラのパターンを変えてます。これもフィルといえばフィル? 小間奏へはまずオープン/クローズのハイハットとバスドラ1発で繋ぎ,その後,「間を入れながら高音タムからロー・タムに移動」というこの曲のフィルのモチーフを,フラムを効かせてやや派手目にして使い,さらにスネアに戻らずにもう一度,今度は6連の速いフィルを入れています。ここも次の小節のアタマがこのCメロ部の最後に入った形ですが,その直前にわずかに間が入っていてなだれ込み感がなくソリッドな感じがします。
2番A/Bメロ部
Aメロは基本的には1番と同じですが,最後のフィルは,最初にスネアと速いバスドラ連打を入れて1番よりもテンションを上げてからタムにいってます。最後のスネアと響く長さを合わせたオープンハイハットがいい感じです。Bメロも1番と基本パターンは同じですが,最後のフィルは1番と違って最後までタムを打って勢いを止めずにサビに突入。
2番Cメロ後の小間奏
ハイハットで繋げてサウンドをテンションを下げ過ぎないようにしつつ,やはり巧みに音数を減らして絶妙なタイミングでタムを入れて,かなり特徴的な間奏へと繋げています。
間奏
かなり弱くシンバルを打った後ハイハットをオープンで打ちながら(バスドラも打ってますが)3拍目直前から3拍目にかけて「トトン!」とタム。小節の後半はライドシンバルを丁寧にきれいな音で入れ,さらに小節が変わる直前にもう一度シンバル。結果的にここは小節を跨る部分でシンバル連打になります(つまりおかもっちの定番ですが,かなり速い連打)。このハイハットの入れ方もすごいです。この箇所はギター・ソロがかなり静かなので,ドラムのこのタムもかなりインパクトがあります。この間奏全体に漂う幻想ムードを,シャッフルのリズムをしっかり入れたフィルで断ち切って最後のサビ部へ繋げています。ここではペダルでハットを入れて,タイムキープしつつ,この前に多用していた金物系の音が急に消えないようにしてます。
C/C'/C''メロ部
C'部からコーラス等のパターンが変わるので,C部の最後は6連の速いフィルを入れて展開部であることを印象づけてます。C'部ではバスドラとベースが完全にフレーズを合わせてます。最後のC''部はベースのリズムが更に変わりますが,ここは普通に流してベースを活かしています。
Ending
スネア2発後ハットで「シャッ!」で締めてます。スリリングな感じを残したままにして余韻を残す感じになってます。

UP

Something Extra

AB'Sのアルバムを最初に聴いていた最初のうちは,Deja VuDee-Dee-Phoneのカッコよさに酔いしれていたんですが,この曲はなんだか「間」が多くて,ちょっとじれったいような感じを持っていました。それが,いつのまにかこの「間」にハマり,そのまま今に至ります。今私はJeff Porcaroの大ファンなんですが,このJeffにも最初多少じれったさを感じながらも,割合すぐにその「間」にハマったのが,実はこの曲が私のベースにあったからではないかと最近思うようになりました。非常にカッコいいドラムなんですが,かといって,決してフュージョン系の派手さではなく,あくまで「歌」のある曲のバックで奏でられるのにふさわしい程度に抑えてあるところもすごいと思います。ベースとの絶妙という言葉ですらあまりに弱いスリリングなコンビネーション,フィルその他のメリハリのつけ方,そして何よりもリズムの正確さ・・・どれをとっても超一級のプレイ。安心して聴けるというよりも,全部お任せ状態で聴いていられる感じがします。

しかし,そこまで考えて,もうひとつ思うのが,リズム・セクション主役のアレンジの後ろで奏でられているギターとキーボードのすごさです。ものすごいハイテクニックなソロを弾ける藤丸さん&誠さんがここまで引いて演奏しているところに,「楽曲のためだけに弾く」というプロフェッショナルなスタンスを垣間見た気がします。

この曲は,私が生まれてから今までハマった曲の中でもトップ5(多分邦楽ではトップ)に入るくらいハマりまくった(そして今もハマっている)曲で,何回聞いても飽きません。例えば10回連続して聞いても,満足はするけど飽きはしないんです。だから,初めて行った2004年にAB'Sのライブでこの曲が始まったときは,なんか涙が出そうになりました。音楽の好みは人それぞれなので,誰にとってもこの曲がそうなるということはないでしょうが,それでも一人の人間をそこまで惹きつけられる曲,というのは,そうそう滅多にはないのではないでしょうか。それだけの魅力がある曲だと思います。

それにしても,これを作ったのがドラマーとは・・・。当時それに気づいたときは本当に驚きました。

この曲,できればライブでもう一回聞きたいな〜。> 暗に山田さんにプレッシャー。(笑)

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