TOTO IVは,10ヶ月かけてレコーディングし,オケ入れのためにUK録音までしたまさに渾身の1枚。そして,1982年度グラミーでは,"Album of the Year"(TOTO IV), "Record of the Year"(Rosanna), "Producer of the Year"(TOTO), "Best Engineered Recording: No-Classical", "Best Instrumental Arrangement Accompanying Vocal(s)"(Jerry Hey, David Paich, Jeff Porcaro(arrangers) for Rosanna), "Best Vocal Arrangement for Two or Four"(David Paich),計6部門で受賞を果たしました。ちなみに邦題は『聖なる剣』。もひとつちなみに,TOTOはジャケットの剣のイラストを配したアルバムは売れております。何故だ。
とにかくこのアルバムの注目は,ビッグバンド的なホーン・セクションの使い方やリズム等で,ジャズやフュージョンのテイストをうまく入れ,ポップさも織り交ぜつつもあくまでロックに仕上げたRosannaと,そのエキゾチックなサウンドと独特のトランス感でTOTO初の全米ビルボード第1位に輝いたAfricaが注目されます。特にゴーストノートを巧く使ったRosannaの1/2シャッフルは,アマチュアドラマーなら一度は叩いてみたいと思った曲・・・だったかどうかわかりませんが,^^; John BonhamとBernard Purdieといういわば元ネタをあっさり取材で公開した点で,更にその潔さに惚れ込んだファンも多いことでしょう。^^
ともあれ,そんな凄いアルバムなのでした。まだ聞いてない人は是非聞きましょう。^^
といいつつ,ひねくれモノのHarrietは,恐らく別に特に話題になってはいなかったと思われるB面が好きだったりします。^^
Rosanna, Africa, Waiting for Your Love等,ヒット曲を次々と生み出したTOTO IV。名作と呼ばれるアルバムには駄作や数合わせっぽい曲が一切ない,というのが共通の特徴ですが,このアルバムは曲順についてもよく練られている印象を受けます。ここでは,6曲目〜8曲目の怒涛のロックメドレー(本当はメドレーではないですけど) に注目してみたいと思います。^^
リリースされた頃はまだCDではなくLP。A面は結構統一感なく曲が並んでいます。しかもノリのいい曲はせいぜい1曲目のRosannaですが,テンポは決して速くはありません。
それが,B面に裏返すと,やや速めのミディアム・テンポ(?)のAfraid of Loveのギターソロによるイントロが聞こえてきます。ジェフのプレイは比較的控え目ながら,ところどころにドラッグ(っていうのかどうか未だにようわかりませんがスティックの先端を転がす音)が入っています。フィルでは連打を入れたりしますが,Aメロ部はせいぜいハイハットを1拍分しっかり響かせる程度でノリはひたすら8ビート。
ただし,最後の方でバスドラのパターンでアクセント付けをして16のノリを出していきますが,リフのコードがメジャーからマイナーになるところも見逃せません。
で,この曲,フェイドアウトしたかな〜・・・っと思った途端,次のLovers in the Night に一気に「交替」します。てなわけで,テンポが保たれます。そしてこの曲,マイナーコードでございます。
このLovers in the Nightは,キーボードソロで始まります。この曲は16ビートっぽい感じをパーカッションで出していますが,ギターもドラムも基本のノリはAfraid of Loveの8ビート感を保ったまま。ハイハットもハーフオープンでいっちゃってます(全部じゃないけど)。とにかく6曲目(B面1曲目)のノリでそのままプッシュします。
で,フェイドアウトしたかと思ったら,次の曲がまた同じようなテンポの8ビートなのですよね。でも,16ビート感がまるで残像のようにイントロのハイハットに受け継がれています。でも,AメロのフィルはAfraid of Loveの「ハイハットをオープンにして1拍響かせる」というワザを再び使っています。でも(<くどい), 3連続の3つ目だけあって,いちばん派手・・・そう,ボーカルがボビー・キンボールになり,サビではTOTOのI'll Supply the Loveを髣髴とさせる明るいメロディーに合った4ビートで入れるスネアが,盛り上がりの頂点をしっかり演出しているのですっ!(<豪放)
てなわけで,同じテンポの同じノリの曲を3曲ぶっ続けです。ところがですね,これ,その次の曲Waiting For Your Loveでシブくクールダウンして,最後のAfricaに繋げるんですよね。
つまり,この3曲により,ライブ感を出しつつ,残りの2曲がぐっと引き立つ構成になっていると思います。私だったらMake BelieveをB面2曲目(7曲目)くらいに並べちゃいそうです。^^; 何故なら:
このA面,ロックバンドとは思えませんよねー? ^^;
それを敢えてこの順番で収録して各曲をフツーに味わわせておいて,B面の3曲ぶっ続けで8ビート! そして・・・という見事なアルバム構成。うーん,うまいですよねー。
・・・という構成のB面1〜3曲目なのですが,Afraid of Love, We Made Itの2曲が,実は楽曲作成(多分作曲ですよね)者として,ジェフの名前がクレジットされています。そしてこの2曲とも,変拍子になってるんですよね。^^
まずAfraid of Loveの特徴は,なんといってもAメロと間奏が「4/4+4/4+4/4+2/4」という構成になっていることです。間奏では2小節目のしっぽにキーボードによるフィルが入ってますが,4小節目のしっぽは思い切って削ぎ落とし。Aメロも歌が入っていない4小節目のしっぽがやはり2拍分削ぎ落とされてます。
また,We Made Itは,イントロから「4/4+3/4+4/4+3/4」という組み合わせですが,このイントロのフレーズは間奏でもエンディングでも使われていて,やはりこの曲の注目すべき特徴のひとつですよね。
それじゃあ,間に入ったPaich作のLovers in the Nightは?というと,この曲,間奏が終わって最後,Coda部に移動する前に2/4(2拍)分,ドラムのフィルが挿入されているんですよね。もちろん,この手の1/2小節挿入はよくありますが,これがあるのとないのとでは,やはりかなり違ってくるのではないかと思います。
ともあれ,この変拍子での味付けがあるからこそ,この3曲連続同じテンポを単調にならずに聴かせることができるのではないかと思います。^^v
次は,この3曲の小技に触れてみたいと思います。気長に更新をお待ちください。^^;