Peanuts FAQ: 7. 舞台劇 (2) 『スヌーピー!』

原著者: デリック・バング(Derrick Bang)
和訳:PFJW(Peanuts FAQ Japanese Workshop)

Last Update: Oct.1,08

7.2) 『スヌーピー!(Snoopy!)』

(訳: Pea)

1975 年 12 月 -- チャーリー・ブラウンが初めて舞台に立って 10 年もしないうちに -- 『スヌーピー!』 が (かつて 『君はいい人,チャーリー・ブラウン』 のサンフランシスコ公演が行われた) リトル・フォックス・シアター(Little Fox Theater)でデビューしました。これは先輩格である 『君はいい人・・・』 の 「歌と寸劇フォーマット」 を踏襲したもので,舞台セットはシンプルで,ギャグもコミックからそのまま拝借したものでした。ラリー・グロスマン(Larry Grossman)が音楽を,ハル・ハカディ(Hal Hackady)が作詞を担当し,脚本にはウォーレン・ロックハート(Warren Lockhart),アーサー・ホワイトロー(Arthur Whitelaw: 舞台監督兼務),そしてマイケル・L・グレイス(Michael L. Grace)の名がクレジットされています。

いくつか登場人物に変更がありました:パティの代わりにサリー(ロクサーヌ・パイル Roxann Pyle)が登場し,シュローダーの代わりにペパーミント・パティ(パメラ・メイヤーズ Pamela Myers)が舞台に上りました。また,スヌーピー役を演じたのはドン・ポター(Don Potter),チャーリー・ブラウンがジェイムズ・グリースン(Japmes Gleason),ルーシー役にカーラ・マニング(Carla Manning),ライナスはジミー・ダッジ(Jimmy Dodge)が努めました。一方,ウッドストックも彼 (彼女?) の初舞台を飾り,最初の部分はセリフなしの演技をアルフレッド・マッツァ(Alfred Mazza)が,その後をおちゃめなキャシー・カーン(Cathy Cahn)が担当しました。

DRG レコード社は 1975 年のこのサンフランシスコ公演のオリジナル・サウンド・トラックをリリースしました(DRG S-6103)。これは後にCD として再発売されました(今日でも入手可能です)。オーケストラによる 「序曲」 と 「ウッドストックのテーマ」 の他に 13 曲が収録されています...

...が,その内の一つ --「友達(Friend)」-- は,現在では劇中では歌われておりません!

タムズ−ウィットマーク社もまた 『スヌーピー!』 の版権所有者です。68 ページに及ぶ台本のどこにも 「友達」 の曲が使用された形跡は全くありません。ただ -- サウンドトラックを拾い聴きしてみると判るのですが -- 実に楽しい小曲なのです。実際のところ,これは元々第一幕のフィナーレ曲で,現舞台では「デイジー・ヒル(Daisy Hill)」でスヌーピーがソロで歌うところとなっています。こうした変更が加えられたのは公演の場所がニューヨークへ移されてからのことで,それもこの 「友達」 が他の曲に比べてあまりいい出来ではないと言うのがシュルツ氏の意見だったからです。

更に話はこんがらがってきますが,チャペル・ミュージック社(Chappell Music Company)が出した 64 ページからなる楽譜集( 8 ページのモノクロ写真付き)には,この 「友達」 が ** 確かに ** 入っているのです。その代わりに,「エドガー・アラン・ポー(Edgar Allan Poe)」 「不寝番(The Vigil)」 「偉大な作家(The Great Writer)」 そして 「やかましい鳴き声(The Big Bow-Wow)」 が削られております。

でもでも...いい話もあるのです!

『スヌーピー!』 は 『君はいい人・・・』 の様にアメリカ中を巡業して回り, 6 年の歳月が過ぎてようやくニューヨーク進出を果たしたのです。ペパーミント・パティの役をローナ・ラフト(Lorna Luft)が引き継いだこのニューヨーク公演では新曲の「急いで,顔さん(Hurry Up, Face)」が加えられ,また,更にまた新しく 「いいことはいつ始まる」 がこのニューヨーク公演の為にラリー・グロスマンとハル・ハカディによって書かれました。しかし -- 1982 年 8 月 2 日にニューベリー・ウォーターミル・シアター(Newbury's Watermill Theatre) で始められた -- ロンドン公演をホワイトローが託されて監督するまでは,この曲は一度も使われませんでした。この舞台は始まってみるとべたほめの批評を受け,2 年間にわたりダッチェス・シアター (the Duchess Theatre) で上演され,その後更に一年,イギリスへも巡業に出ました。

このロンドン公演のオリジナル・キャスト・サウンドトラック版をポリドール・レコード社が出しました(S-820247-1)。スヌーピー役をテディー・ケンプナー(Teddy Kempner),チャーリー・ブラウンをロバート・ロック(Robert Locke),ルーシーがゾゥイ・ブライト(Zoe Bright)で,サリーがスージー・ブレイク(Susie Blake),ペパーミント・パティをニッキー・クロイドン(Nicky Croydon),ライナスをマーク・ハドフィールド(Mark Hadfield),そしてウッドストックをアンソニー・ベストがそれぞれ演じました。

と言った具合に,納まるべきところに納まってしまうと,この 『スヌーピー!』 も元々のサンフランシスコ版から成長して 「開花」 を迎え, 4 つの新曲を加えるに到りました:前述のペパーミント・パティのソロ曲 「急いで,顔さん」,「母の日」 にちなんだスヌーピーのソロ曲,ルーシー,スヌーピー,サリー,ペパーミント・パティーによる曲 「 1 ダースで 10 セント」,そして第 1 幕を締めくくるアンサンブル曲 「いいことはいつ始まる?」。これらは全てグロスマンとハカディの手によるもので,序曲も新しく加えられた曲のテーマを組み込んで若干手直しを受けております。

これらの新曲は楽しい曲です: どれを取ってみても,サンフランシスコ公演で 「生き残った」 曲達と遜色ないほど魅力たっぷりで機知に富んだものです。「急いで,顔さん」 の歌詞を見てみて下さい。ペパーミント・パティが 「愛する人」 に出会えないのは自分のおてんばなルックスのせいだと (思って) 嘆く歌です。

急いで,顔さん...かっこよくなってよ..さぁさ急いで
あるべきところに納まるのよ...ハッピーにしてちょうだい
...さぁさ急いで
もう待てないわ,ストレスだわ,...あんたがあんまり遅くて
あっさりしてんのね,お顔に鼻があってあたりまえみたいに
そうなんでしょ,違う? さぁさ急いで!
優しい気持ちが...ちゃんとあるんでしょ...
さぁさ急いで...急いで,顔さん!
お願い,急いで,頑張って...時のたつのは早いもの!
アッと言う間に何年も...心配なんです
...置いてけぼりになっちゃうわ!
もう追いつけないよ,お顔さん...やめてよね,こんなことって
鏡はちゃんと見ているわ,お顔さん...鏡は知ってる...
もう負けだってことを...鼻の差で,
だから...つながれたヒモを解いて
急いで,顔さん...よーい,ドン...全速力でまっしぐら
優しい気持ちが...ちゃんとあるんでしょ...
いつかそのうち,きっと...
追いつけるから,そのうちに...
だから,位置について,よーい...急げ,顔さん!
(やれやれ!)

ロンドン公演のキャストでの CD が 1998 年に再リリースされ,現在ではたやすく手に入ります。この 2 つ (すなわちサンフランシスコ版とロンドン版) を聴き比べてみて下さい。違いが自ずと判るはずです!多くの舞台が初演間もない頃に修正や大幅な改変を受けています (ジョージ&アイラ・ガーシュイン夫妻の作品も絶えずこの修正・改変を受けてきました)。しかしながら,しばしばその結果がどうだったのか,後にも先にも耳にする事はありません。「公演をしたい」 とお望みの向きのために,タムズ−ウィトマーク社はイギリス版の脚本とスコアを用意してくれています。これには上記の新たな追加曲の楽譜も含まれております。


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