学生向けコンテンツ: 論文の準備の仕方
(学士論文・修士論文を執筆する学生向け)

Last Update: 2021-11-05

ここでは,本研究会事務局員が,卒業論文及び修士論文を執筆する際に先生方にアドバイスされたことの中から,どちらかといえばテクニック(要領)を中心にご紹介しています。内容については指導教官の先生方のアドバイスにしたがってください。

参考文献に関しては,当サイトの『推薦図書』のページも参考にしてください。(まだあまり充実していませんが・・・)


テーマ決め

関連図書を読みまくる

  1. 本を読む。広く浅くジャンルを紹介した本から始めるとよい。講義で使ったテキストも参考になる。
  2. 興味があるものを担当教官に話し,もう少し専門的に書いたものを紹介してもらって読む。

興味があっても,以下のようなものだと書きにくいので注意する。まずは興味のあるテーマを早めに選び,指導教官に早めに相談するとよい。

論文を書くのが難しい場合

先行研究がほとんどないもの

研究が成り立たない,論文が書きにくいから先行研究がない,という場合もある。つまり,結局うまく論文が書けず,行き詰まる恐れがある。

興味があっても言語学的に切りようのないものもある。

既に研究が尽くされているもの

既に議論が尽くされ,現在はもう他の理論がメインになっている場合に,古いテーマを扱っても新しい結論が何も出てこない場合がある。

テーマが広過ぎるもの,もしくは狭過ぎるもの

例えば,「定冠詞」だけでは広過ぎて書きにくい。また,広範囲の分野にわたるものも参考文献を読むだけで大変である(語学だけでなく,文化人類学や社会言語学,心理学など,2~3種類ならともかく,全部を知り尽くさないと書けないようなものを書く場合は,それなりの覚悟が必要。)ある程度絞り込んだ方が書きやすく,例文も集めやすい。

逆に,狭過ぎては論文にならない。ある程度拡張性のあるものでなければ意味がない。

難易度的に手におえないもの

あまりにも高度な研究は,能力的に,というよりもそれ以前に現在の知識では手におえない場合がある。例えば,チョムスキーの文献を全く読んだことがない人が,チョムスキーのミニマリズムの話をたまたま聞いて卒論で扱ってみたいと思ったとしても,訳本を読んでも何をいっているのかさっぱりわからなくて結局何もかけない,ということも十分ありうる。

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研究の前に

執筆前にやっておけること

「論文の書き方」に関する本に目を通す

指導教官から助言があると思うが,1冊持っていたほうがいい。特に語学関連の場合は,引用元が本とは限らないので(新聞・雑誌・広告その他),引用文献の紹介の仕方等をよく見ておく。

「参考文献」 のページを作っておく。

執筆のために本を読んだら,その都度,『論文の書き方』や,手元にある参考文献の "References"などを参考に統一した書式にしてリスト化し,論文の「参考文献」に使えるようにしておく。完成の段階で不要になった本の情報は削除すればよい。

表紙を作る準備をしておく。

直前に準備するのは案外鬱陶しい。綴じるもの一式(表紙・綴じひも)の購入・穴あけパンチ等を予め準備しておく。また,テーマが決まった時点で,タイトル,学籍番号,氏名も入れる(中表紙も)。先輩の論文を借りていない場合は先生に頼んで借りる。

データ集めのための準備

メモ用カードの準備とデータ収集

表側に興味を持った事柄・ネタ・例文を書き,裏にはそのネタの出典を書く。例えば,新聞記事などに例に挙げられそうな文を見つけた場合,表にその文を書いたり切りぬきを貼ったりし,裏に「○○新聞夕刊,日付け,2面」などとメモしておく。生協で売っているので,自分にあった大きさのカードを購入するとよい。関連図書を読んでいる時に興味のあることをメモしておけば,テーマ決めにも役立つ。

テーマがほぼ絞れたり,使いそうな例文等があれば,随時パソ打ちして保存しておくとよい。論文を書く際,コピペで済むので時間が節約できる。一旦打って活字化されたテキストを見ると,客観的に例文が見られるという利点もある。

パソコン関連

入力準備

日頃からブラインド・タッチで打てるように練習しておく。練習ソフトを利用するのもよい。

辞書機能を利用し,よく使うと思われる用語については簡単に出るようにしておく(「かんれん」と入力すると「「関連性理論」(Relevance Theory)」と出る,など)。辞書化した用語の早見表をメモ帳等に作り,デスクトップ上に置くのも便利。

ワープロソフトの書式設定

指導教官の説明に準じ,フォント,字数・行数等,決まった書式で打てるように設定しておく。また,設定どおりにプリントされるか試しておく。

なお,例えばWordの場合,勝手に番号や段落が変わってしまう等,機能をわかっていないと戸惑う場合も非常に多い。マニュアルをよく読み,必要に応じて設定を変える。

綴じる際,提出部数分の用紙をパンチで穴をあけるのは案外時間がかかる(特に修士論文)。時間がかかるだけならよいが,すべて印字した時点で書式がぎりぎりすぎてパンチで穴をあけたら文字部分を消してしまった,というようなことがないように。あらかじめ表紙の穴に合わせて用紙にパンチで穴をあけておくのも手。

データの保存とバックアップ

ファイルを更新する際,今まで書いたものを再び利用する可能性がありそうなら,ファイル名を変えて別に保存しておく。ファイル名に更新日を入れるとわかりやすい。(例)110901ronbun.doc

文章を書いている最中に強制終了,いきなりHDDが壊れる,等,パソコン関連のトラブルは多い。まめに上書きするだけでなく,USBメモリーやCD-RW等へのバックアップもこまめに行う習慣を身に着けておく。どのCD-RWに保存したかわからなくなる,等ということのないように,ファイル名とバックアップした日付のメモも忘れない。念のため複数メディアに保存しておくと良い。CD-R等のディスクにはケースにラベルを貼っておく。

※パソコンの普段のメンテナンスも忘れないようにする。

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研究

とにかく先行研究を読む

参考文献を読む。参考文献が使っている参考文献にもできれば目を通す。また,参考文献の著者のほかの文献にも目を通す。

研究者によって用語の定義が微妙に異なっているので,必要に応じて専門の辞書等で確認しておくとよい。

材料を集める

参考文献にある例文以外に,適当な例がないか常に気をつける。案外,新聞・小説・雑誌・コミックなどにちょうどいい例がある場合がある。テーマを早めに決めるとこのネタ集めがスムーズに行き,先行研究を更に膨らませられる可能性が増す。カードを利用し,データの整理をしておく。

先生に聞く

先生にもよるが(!),相談すればどんどんアドバイスをくださる先生も。ただし,結論までは出してはもらえないので甘えすぎないこと。逆に,全部自分で抱えようとし過ぎる必要はない。論文を普段から書き慣れ,また読み慣れているひとにしかわからないことというのがたくさんあるので,そういう意味で先生のアドバイスは貴重。

院生の場合は学会で情報を集められる。学会情報に常に気をつける。

インターネットで調べる

最近では,論文を.pdfファイルで提供するサービスを行っているサイトもあるので,随時利用する。

Googleなどの詳細検索機能を使えば,ファイル形式や国等を指定して検索することも可能。

今は多くの先生がインターネットを利用しているので,Wikipediaやどこかのサイトの丸写しをしてもすぐバレる。何よりも自分のためにならないので誠実に取り組む。必死でやれば論文の完成度が高くなるだけでなく,必ず自分の糧になる。

サイトの場合,いつ更新するか分からないので,参考文献として利用する場合はアクセス日を記録しておく。参考文献の書き方の書籍などを参考に。

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辞書・辞典

論文を書く時に限らず,正式な文を書く場合はきちんと辞書を活用する。

流れ

  1. 和英辞典を引き,言いたいことを表す語句を調べる。
  2. その単語の用法や意味の細かな部分を英和辞典や英英辞典で調べ直す。
  3. その単語の用法の適切さを細かく確認する。
  4. 連語辞典や活用辞典で単語間の繋がりが自然かどうかを調べてみる。

オススメの辞書(英語で論文を書く場合)

(ひとによって違いますが,当サイトの事務局員は個人的なシュミで以下の辞書をオススメします。)

  • 和英辞典:小学館 Progressive 和英辞典
  • 英和辞典:小学館 Progressive 英和辞典
  • 英英辞典:Longman 現代英英辞典 Dictionary of Contemporary English
  • 単語チェック:Longman Activator
  • 活用辞典:研究社 英和活用大辞典(値段は高いが,とても参考になる。)
  • Longman A Comprehensive Grammar of the English Language(文法書)
  • コンサイス英文法辞典など,文法関連の辞典
  • 文法用語集

日本語で書く場合も,適宜国語辞典等を引き,漢字や意味の勘違いなどのミスがないようにする。

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章立てと執筆

章立て

ある程度書きたい内容が揃ってきたら,その内容を整理し,章立てを考える。

流れ

  1. 大きな紙を1枚用意する(A3でもB4でもA5でもいい)。そこに,書きたいことをすべてに書き出す。
  2. 書き出したことの類似性を見て,似たものについてはA,B,Cなどと記号を打って分類してみる。
  3. 流れを考える。どの順番だとスムーズに流れるかを見る。基本的には,[1]先行研究の紹介, [2]先行研究の問題点など, [3]自分の意見,という流れになるが,この[3]の流れをどうするのかがカギになる。
  4. [3]の流れがうまくいかない場合は,どういう中身が補われたらそこがうまくいくか考え,そのあたりを補填するための参考文献にさらに目を通したり,考えを詰めたりする。
  5. あらためてもう1枚の紙に,今度は分類した順に整理して書く。これで章立て(仮)がとりあえずできあがる。
  6. 結論が出そうにない場合は,論文の方針転換をせざるを得ない場合もある。例文など,一旦必要がないと思ったものも取っておくとよい。
  7. 1枚の紙にすべて書くことにより,すべての書きたいことを一目で見渡すことができ,非常に整理しやすい。自由英作文や簡単なエッセイなどを書く場合の章立てにもこの方法は非常に有効。逆に,数枚の紙でやると「世界が変わる」ため,まとめにくい(とアドバイスしてくださった先生がいらっしゃいました)。

付箋を利用する方法もある。アイディアのまとめ方が紹介されているビジネス書も参考になる。

執筆

  1. 分類にしたがって書き始める。少なくとも先行研究の紹介だけはある程度は書けるはず。書きやすいところからで構わない。
  2. 結論が出ていないところも,ただ考えていても進まないので,まず書いてみて,プリントアウトし,それを読みながらまとめ直していく。活字になったものを見ると冷静に読める場合がある。また,打つのが遅い人は,引用箇所だけでも入力しておくだけで役に立つ。
  3. 章をさらに適切に節・項で分けていく(書式は指導教官の指導に従い,章番号の書き方等を統一する)。
  4. 結論がでたら,Conclusionでまとめたあと,Introductionを書く。Introductionには(1)先行研究 (2)先行研究の問題点 (3)自分なりにどう議論を展開していくか, を簡潔に書く。
  5. 例文などは,書き直すと番号が変わってくるので,最初記号などに留めておき,あとで一気に番号を入れるという手もある。本文との整合も忘れないようにする。
  6. 参考文献や引用元の明記を忘れない。特に例文などに引用を多く使った場合,表記漏れがないかしっかり確認する。

提出

  1. プリントアウト。ページ番号をつけるのを忘れないように 。(予め書式設定ができていれば,ぎりぎりになっても焦らずにすむ)
  2. 表紙。案外面倒なので,テーマが決まった時点で作っておく。(上述)
  3. 綴じる。(上述) パンチでの穴あけに失敗しないように。失敗してもすぐにプリントアウトできる場所で行うとよい。
  4. 提出は余裕を持って。当日病気や事故で提出できなくなる場合もある。できれば期限の前日までに提出する。提出が遅れれば留年になることを忘れない。

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