実は活動再開第1弾(<何回AB'Sを取り上げるつもりだ ^^; )は,『A5B3S』の「Last Horizon」にするつもりだったんですが,YouTubeでこれを見つけて急遽変更しました!!! 私,この曲,大好きなんですっ!!!
松下誠楽曲。NEWのアルバム制作時,誠さんは腰痛(職業病 TT )に悩まされていて作曲に専念できず(きっと安静第一状態だったに違いない・・・TT<同病相憐れむ状態),てなわけで,以前作った楽曲を提供しました。まず1曲が,18の時のことを思い出して作った曲との紹介だったAlwaysですが,もう1曲が30代後半,もう結婚していた頃に出会ってしまった相手とのことを歌にした,とライブで紹介されたとき,少なくとも名古屋ではウケました。^^; どこまで本当なんだかわかりません。^^; しかも,Singing in the Rainと間違えてるしぃ。^^;
という雑ネタなんぞ簡単にひっくり返すクオリティの楽曲。AB'Sファン(特に誠ファン)のShokoさんが一時期ヘビーローテーションだった,とおっしゃるのもよくわかります。かくいうHarrietにとってもそうでした,いえ,今だってこの曲が流れ始めると,ドラムソロが終わった時点で頭だしでまた最初から・・・(あれ?はりちゃん,曲が聞きたいの?それともドラムソロが聞きたいの?)^^;
アレンジ自体は誠さんがしてますので,果たしてどこまでがおかもっちが任されててどこまでまこっちゃんの指示があったのかは全く不明です。Alwaysは全部デモどおりに演奏してくれなきゃいや,とゴネたところ,全パートそのように演奏「しやがった」とAB'Sのサイトに書いてありましたが ^^; この曲については特にその種の言及はなかったかと思います。ただ,この曲はおかもっちのソロを入れることを当初から念頭においてアレンジされたと記憶しています。(I My Meが,ドラムだけソロがなかった,というのもあったのかも。)結局まこっちゃんもおかもっちのドラムが大好きなんですね。うふふふふ。^m^
さて,この曲は比較的シンプルな8ビートの楽曲。終始ハーフオープンでハイハットが入る曲というのは,AB'Sでは珍しいです・・・ってか,他にないかも。
ただし,印象的なのが,そのハーフオープンなハイハットを含めたシンバルワーク。特に4拍目に時折入るシンバルは,究極のフィルとも言えるでしょう。夜の雨の中(勝手に夜にしてますが ^^;), 傘もささずに(勝手に状況設定してますが ^^;; )一人歩く松下誠が(勝手に主人公にしてますが ^^;;;),カーブした道で通り過ぎる車のヘッドライトに浮かび,更にそのライトと振りしきる雨の中,アスファルトに溜まった雨が車が通り過ぎるたびにバシャッ!っと跳ねる(これが4拍目のシンバル)・・・そんな状況が目に浮かぶ・・・ってなんての,Harrietだけかしら? ^^; しかもそれが冗長にならないようにちゃんとフラムで締めてるのがこれまたお見事なドラミング。^^ だから2番に移ってもこの状況(とドラミング)が続けられるわけで,松下誠は今や雨に濡れて風邪引き寸前・・・。^^;
と・・・ともあれ,そんな状況が目に浮かぶのは,この曲とこのシンバルとの相乗効果に他ならないわけですが,それをダメ押ししているのがドラムソロパートです。
まず他の楽器がユニゾンしつつキメて,そのキメ以外の箇所にスペースを開けます(この段階で松下誠のアレンジの見事さにノックアウト)。そして,ひと回ししたあと,左右のフットペダルを交互に踏んでハイハット音を途切れさせることなく,スネアのリズムが変わり,更にフロアタム(かな?)が絡み始め(このパラっという入り方がたまらない!!!),ラストで叩きまくりが入ります・・・が!!! 最も肝腎なところ・・・それは,このソロがこの楽曲に全く浮いていない,それどころか,イメージ的に完全にハマっているところでしょう。徐々に松下誠(<あくまで主人公,但しイメージ上は30代のまこっちゃんであって,今の髪型ではありません ^^; )に叩きつける雨が激しくなっている(最後の叩きまくりがそれ),それは雨の中を歩く松下誠の心情をそのまま表している,といっても過言ではありません。(そうか?) ^^; まさに「歌モノの中のドラムソロ」のお手本のようです。
しかもですね,Harrietは最初,名古屋でのライブでこのソロを見たんですが,おかもっちの叩き方がこれまた平然としてまして,ライブだから客の期待に合わせてオーバーアクションをしたり表情を変えたり,というのが全くなかったんですよね。名古屋ではこのソロのあとに拍手が沸いたんですが,その時にこっと笑っただけ。*^^* 自分をアピールしようという欲なんぞゼロ,そもそもそんな必要なし。歌モノをこよなく愛するおかもっちは,他のミュージシャンを鼓舞する必要も演奏以外のパフォーマンスで客を喜ばせる必要もないAB'Sでは楽曲のためだけに叩けばいいわけで,Jeffが最も愛したこのスタンスをおかもっちもとっても愛してる,ということが,如実にわかるシーンでもあります。このおかもっちに対抗できるのは,Bruce SpringsteenのHuman TouchにおけるJeff Porcaroの「締め1発以外フィルなしのドラムソロ4小節」(4:27)以外ないでしょう。
ちなみに,AB'Sの他のファンの方々とセッション等で話すと,それぞれのプレイヤーの方々の演奏技術はもちろんですが,何よりも楽曲のアンサンブルにシビれてる人が多いことを痛感します。だから,ソロの掛け合いをやっても楽曲から浮いた弾き倒し系な演奏する人がいない・・・ 腕自慢が揃っている中でコレは本当に凄いことなのです。^^;;;
てなわけで,映画かドラマの挿入歌のようなこの曲,是非雨の中のまこっちゃん(いや,別にホンモノの役者さんでもいいですが)を思い描きながらお聞きくださいませ。^^ そうすればドラムがいかに効果的に使われてるかを実感すること間違いなしです。^^
なお,Harrietによるこの曲の解説(まだあんましドラムを知らない頃に書いてるのでちょっと書き直さないといけないですが)もあわせてご覧くださいませ。^^
はい。大変長らくお待たせいたしました。^^; いよいよおかもっちがAB'S以外で自身の作品として気に入っているアルバムとして挙げてるThe Triple Xのファーストアルバムからの楽曲です。
このアルバムについては岡本さんは「街の段ボーラー」を特に「名曲」とおっしゃってたんですが,ドラムに限って言えば,この楽曲のドラムはさらに何気に細かく凄いのです。なんといってもまず冒頭,イントロの出だしからして既にカッチョいいです。^^
で,多分聞き手はこの特徴のあるギターのリフから,当然Led ZeppelinのBlack Dogを思い出すはず。つまり,聞くときからロックファンなら,John Bonhamのドラムを想起するわけで,おかもっちはその音と比較されるわけですが,大丈夫,おかもっちは日本を誇るパワフルヒッターでもあります。音質的な物足りなさを感じさせるようなことは全くありません。
さて,機材の復習をしましょう。13インチのタム,16インチのフロアタム,24インチのバスドラム。黒のフロントヘッドにはThe Triple Xのロゴが入っています。(詳細は機材のページ参照。)おかもっちは諸岡さんのライブでもこのフロントヘッドは取り替えません。^^; そう,おなじみ3点セットというやつですね。このバスドラでドスドス踏まれると心臓に響きます。はい。^^;
で,Harrietはまずイントロでどきっとするわけですが,その後このZeppのリフのカッチョよさと桑名正博の超!がつくほど濃いボーカルに引き付けられます。あ,いいんです,おかもっちのドラムは他を引き立たせるところにあるので,メインに関心がいくというのはおかもっちの真髄を感じ取れているということにもなります。で,聞いてて「あれ?ちょっと待ってよ!!!」と思った箇所は,このYouTube映像でいくと1分22秒のところ。そう,なんとおかもっち,ここでバスドラ16分2連打,つまり,ジェフ流ドットコタをやってるんです!!!
このテンポですし,そもそも2連打くらいならおかもっちなら朝飯前,特に取り上げることではないわけですが,とにかく打つタイミングがジェフとそっくりなのです! そうですね,K.ODAでのジェフの入れ方にとてもよく似ています。この曲は比較的テンポがゆっくりの上,イントロ>ボーカルAメロ>Zeppばりのリフ>ボーカル再びAメロ>つなぎのギター2小節>Bメロ(>キメのCメロ>Dメロ>キメのCメロ という,ちょっと珍しい楽曲構成になっていて,該当箇所はスネアが入るタイミングが倍になるDメロの4小節目。完結すると思わせて続くこのDメロの存在で「あれ?なんだなんだ???」と思ったところでこのバスドラでさらに「はっ!」とさせられ,そこで改めて完結部を迎えさせるこの効果の出し方はまさにJeffの言うところの爆弾! 車で聞いたとき,Harriet,「な・・・なんだ今の???」と思わずもっかい最初から聞きなおしました。で,2番の同じ箇所ではこれが2回入っていて,これで完全確信。「うおおっ!!! ジェフだジェフだジェフだ(×無限大)!!!」ってなモンです。^^ おかもっちの中に小柄だったジェフがまるごと入ってるんじゃないかと(?)思ったほどで。^^(<ってどんなんだ。^^; しかも体がでかくなった分パワーアップしてる。^^; )
しかし,それでは単なるジェフのモノマネになってしまいます。もちろんそんなこたありません。この曲のドラムの珠玉はなんといっても間奏でしょう! てなわけで,これも譜面に起こしてみました・・・ってか,起こしたくなるようなドラムなのです!!! (あ,でも,多分いっぱい間違ってます。だって,ほら,はりちゃん,ドシロウトだし,しかも担当楽器,キーボードだしぃ〜。^^ )
(しかしこのソフトのドラム,なんつートホホな音・・・。^^;
楽譜にしても,HHのオープンとクローズドが書き分けできないんですよね,これ。TT)
これであってるかどうかはわかりませんが,まあYouTubeがあってオリジナルが聞けるからいいことにしましょう。^^; もうね,ドラムだけ聞いても素晴らしいと思いませんか? これだけ音数が少ないのに,いや,少ないからこそ,とにかくカッコいい。「めっちゃ!」カッコいい。Harrietがこれまでに聞いた歴代ドラムフレーズの中でも恐らく3本の指に入ります。手数と速さ勝負だけのドラムなんて聞いていられません。数打ちゃダレだってカッチョよく聞かせられます。しかし,これだけ音を抜いて,しかも3点セットで,これだけ聞かせるドラマーが果たしてどれだけいるというのでしょう?
いやいや,ただカッコいいだけでは,おかもっちのドラムは理解しつくせない。やはりギターソロとの呼応具合を見ないとだめなのです。入りでのロングトーンにあわせたスペース,次にそのギターのリズムにバスドラを合わせ,ギターの休符箇所ではドラムもスペース。でも,長すぎると冗漫な感じになる,そこにバスドラ連打を入れてスリリングさを演出,さらに最初のフレーズの完結部の前の間にもバスドラ連打を入れてギターソロに注目させ,完結部では多分フロアタムで16分で合わせつつも連打にはせず,次のフレーズでは音数が増えるギターに合わせて少し音数を増やしながらも味付けはタムに一発飛ばしのワザ(タイミング的にはJapanese Punkish Girlと共通),メインの楽器を巧みに支えて際立たせつつ,3フレーズ目はフラム2発で締めてギターソロが後半に入っていることを示唆,ギターの移行のタイミングが面白くなったところでドラムもイレギュラーなタイミングになりますが,これらの合間に見られるバスドラ連打がやはりすっごく効いていて,最後はフラム連発でキメ&締めまくり。スペースをきっちり開けつつも要所要所で適度なスパイスを入れ,合わせはずしサポートしリードする。楽曲のために叩くというスタンスにおいて完全にJeffと共通していることを再認識させつつも,フラム使いや音質,タイコの選び方やフレーズ等でしっかりとおかもっちの個性を見せつけてもくれます。なんでおかもっちが叩くと楽曲がカッチョ良くなるのか,の答えがまさにここにあります。とにかくおかもっちのドラムはアンサンブルをチェックすると,あまりの素晴らしさにほっぺがゆるんでもうただただ幸せになります。
思えば,JeffもおかもっちもJohn Bonhamに多大な影響を受けてます。Jeffはハードロックはやっていませんでしたが,Jeffのテイストがおかもっちによって再現され,しかもJeffを介在しずにダイレクトにJohn Bonhamのテイストもおかもっちが出していける,という意味で,おかもっちがハードロックを聞けるというのはある意味感慨深いものがあります。
なお,この24インチバスドラと田辺モットのツブツブベースとの音色の相性も凄いです。バスドラとベースの合わせ具合とはずし具合も絶妙で,このコンビネーションを考えた桑名正博はとにかく凄い!!! で,これ,レコーディングエンジニアはダレなんだ?と思って見たら・・・「Recorded Engineered by JUN-BOH(河内淳一)」・・・河内淳一って一体・・・。^^;;;
で,肝腎なこと。これらすべてが,桑名正博のボーカルに決して勝っていない,そごがまた凄いのです。歌モノとして成り立たせる最高の条件を備えているといったも過言ではありません。無論それは,桑名正博の力が大きいわけですが,バックが胸を張ってそうしたスタンスで演奏していることも大きいわけで,また,桑名正博がそういう演奏をしたくなるようなボーカリストであるからとも言えるでしょう。The Triple Xは桑名正博の声と表現力の突出振りを改めて感じさせてくれる素晴らしいバンドです。
。。。余談ですが,歌の冒頭,「あっちゃこっちゃのビルを・・・」のところ,Harrietには「ビル」がビールに聞こえて,聞くたびに桑名さんがアサヒやキリンやサントリーやサッポロの缶ビールをいっぱい買い回って抱えてる絵を思い浮べてしまっていることはナイショです。^^;
お馴染み,日本で最も有名なアニメのテーマで,1997年のテレビスペシャル『ルパン三世 ワルサーP38』(1997)で大野雄二が音楽担当に復帰した際のリアレンジバージョン。
『ルパン三世』は元々モンキー・パンチの漫画。それが「初の大人向けアニメ」としてテレビアニメ化され,当初はいろいろ言われたものの,再放送で人気が高まり,第2シリーズで人気を確立。一方,日本のアニメは,漫画の普及と共に80年代には海外でも放映されるようになり,徐々に世界各国で市民権を得ていきます。ま,お金があるハリウッドのSFXに日本はアニメで対抗するしかなかった,という側面もあるかもしれませんが。^^;
てなわけで,当然このルパンシリーズ,海外でも人気があります。漫画『日本人の知らない日本語2』(蛇蔵 & 海野凪子著(2010) メディアファクトリー)には,ルパン三世のセリフを丸暗記しているルパンコスプレアメリカ人も登場。^^; もちろんこの『ワルサーP38』も海外でもDVD化されています(海外でのタイトルはIsland of Assassins)。したがって,おかもっちの最も広く聞かれている演奏楽曲トップ3に入るのではないかとHarrietは勝手に推測しております。^^ (ちなみに他は,欧州各国でMP3配信されYouTubeにアップロードされるAB'S「Deja Vu」,英語圏サイトに絞っておかもっちの名前(ローマ字)で検索をかけるとヒットするFFIXのテーマあたりかな?と思うのですが,実際のところは不明です。 ^^; )
さて,本テーマは,ジェームズ・ボンド愛用拳銃を配したタイトルにふさわしく,007のテーマをイントロに混ぜ込み,さらにコンピューターオペレーションを絡ませ90年代後半らしさも加味してあります。なんせ1997年前後は小室サウンドが大ブーム。打ち込みバンバン,高いトーンの女性ボーカルによるハイテンションな楽曲が巷で流れまくっておりました。また,テレビスペシャルということで,CMや他局の番組に負けないインパクトも求められたことでしょう。そんな状況の中,日本ジャズ界の最高峰・大野雄二が「ホンモノの音楽とアレンジと演奏」で圧倒的な力量の差を見せつけてくれます。^^
・・・といいつつですね,Harriet,実はこの解説を書くに当たって大変困りました。ってのはですね,この曲のドラムのタム,おかもっちが叩いてるのをミキシング段階で何らかの処理(「プロセッシング」というのかな?)をしているのか,電子ドラムを叩いてかぶせてるのか(これはHarrietはAB’S-3でも勘違いした),それともシンセによる打ち込みなのか,よくわかんなかったんですよね。というのは,普通,腕や足の本数を考えながらフレーズを聞けば,こりゃ人間には無理だ,とかわかるんですが(爆),この曲,ま,確かに腕2本では叩けない箇所もあるんですが,ダバダバ言ってる後のタムとか,腕の本数を考えてもおかもっちが叩けないこともないんですよね。おまけにシンセタムに微妙にレイドバック感がある箇所まで。とにかく,ナマ音箇所とシンセタム箇所がエンディング近くの速いフィルを除いて,あんましかぶってないんです。おかもっちらしくないフィルもあることはあるんですが,楽譜のまま叩いてる上エフェクト処理してあれば音質とかダイナミクスも変わってくるはずだし,うーん,うーん。。。と悩んだ挙句・・・。^^;;;
・・・このCDのレコーディングエンジニアリングを担当された伊豫部さんに聞いちゃいましたーーーーっ!!! ^^;;; <ずるいヤツ ^^;
伊豫部さんによると,残念ながらリズム録りについての記録はないそうなのですが,この曲は1997年5月にレコーディング,午後1時からシンセの打ち込みをして,3時からリズムセクション,5時からストリングス,この段階でシンセの手弾きをレコして,夜10時から(!!!)ブラスの録音,翌日(!!!!)コーラスのダビングをしてミキシングされたのだとか。で,この『ワルサーP38』のエンディングテーマである『瞳を忘れないで』も同じCDに収録されてるんですが,この2曲,ベーシストが違うんですよ! 『ルパン三世のテーマ』は直樹さん,『瞳を忘れないで』は岡沢章さんなのです。言い換えると,大野さんはこの2曲をそれぞれ,直樹さん,岡沢さんに想定して(もしくは,この二人がそれぞれの楽曲にふさわしいと考えながら)アレンジしているわけで,実際,『瞳・・・』の方は女性ボーカルによるしっとり系のワルツ(6/8かもしれない ^^; ),岡沢さんのベースが確かにマッチしております。でも,ドラムはこちらもおかもっちなのです。ということは,大野さん,どちらの曲も最初からおかもっちを想定してアレンジされてると考えて良さそうです。となると,シンセタムによるフィルがおかもっちが叩くフィルのイメージと合致するのもうなずけます。^^ だからHarrietが迷うのも無理ないわけですね。あ,なんだかものすごく言い訳がましくなってまいりました。^^;;;
さらに,伊豫部さんによると,大野さんは,@シンセを「生楽器の代理」という使い方はしない A譜面は全て書き譜なので,シンセタムとおかもっちのドラムの関係もきっちり計算していたはず B基本的に作為的なことを嫌い,そういったことが必要な場合もその割合を微妙なところで抑えることが多かった Cアレンジの際,無駄にチャンネルを使わないようスコアの楽器名の下に使用チャンネル数を書かれていることが多かった。。。のだそうです。(さ・・・さすが・・・。^^;;;;;;;;; )
。。。てなカンペキ主義な大御所の御指名だったというのは,一おかもっちファンといたしましては大変嬉しいというか光栄というか,どうしておかもっちを選んだのか聞いてみたいというかなんというか〜〜〜,なわけですが,もちろんそれは無理なので,^^; とにかくサウンドを聞くことにいたしましょう。^^;
まず,冒頭は上述の通り007テーマが絡めてあります。本作は「コミカルなシーンが少なく、終始緊張感のあるダークな作風で、ルパンシリーズには珍しいバッドエンディング」(Wikipedia「ワルサーP38」の項より引用)ということなので,おそらくその作風に合わせ,元々ルパンが持つラテン系な軽いノリと熱さに007映画が持つゴージャスかつ重厚さと暗さ(英国映画なのでユーモアはあるけどテーマは殆どマイナーコードややゴシック)さを見事に合体させたサウンドに仕上げてあるものと思われます。^^
銃の打ち合いを髣髴とさせるシンセタムやひゅんひゅんシンセ効果音が時代性を加味,ラテンパーカッションと超!がつくほど濃い女声コーラスが熱さを演出,一方で重厚なブラスアレンジがゴージャスさをアピールするわけですが(Tp4, Tb4, Sax5,更にTp4ダビング(伊豫部さんからの情報:さすがにCDのクレジットには「数原晋グループ」としか書いてない(けど,平原まこととかも入っていたかもしれない ^^ )しかもストリングスセクションも入ってる),これだけ途轍もない分厚いサウンドを仕切るには,おかもっちと直樹さんの音がぴったりだったのでしょう。ひょっとすると市原康が当初からスケジュールの都合がつかないとわかっていたとかそういうことだったのかもしれませんが,ま,勝手な妄想はファンの特権でありファンサイトの醍醐味でもありますからね。うふふ。^^
で,この頃おかもっちはThe TripleX結成・・・はまだなんですが,桑名正博のツアーサポートには既に入っていたと思われます。The Triple Xの時はスネアは既にウッドフープだったので(今はスチールのリムに戻ってる),これもそうじゃないかなあというのがHarrietの推測。ダバダバダバダバ〜〜〜のあと,テーマに入る前のところのキメのスネアの音を聞くとそんな感じがするのですが,皆様はいかがでしょ? フュージョン系なのでスチールのリムを装着していても不思議はないのですが,女声コーラスもかなりフィーチャーされてる曲ですしぃ・・・。^^; <結局よくわからない ^^;
さて,派手なイントロが終わると,テーマの冒頭は意外と低めの音域に抑えてあります。Aメロ後半はコーラスでメロディーラインが作られていて,またキメが続きます。めちゃくちゃ濃いです。^^; でも,その濃いキメをおかもっちのスネアがばしばしと仕切ります。こんな音,他に誰が出せるのでしょう。音がでかい,芯が太い,しかもタイトで余計な音がしない,まがい物(エフェクトとかミキシングレベルで音を作る)のではなく,正真正銘,ライブで聴ける,あの「おかもっちのオト」です!バスドラの音質もタイトでいい具合にドスドス来ます。^^ まさにHarriet好みです。^^
Bメロに入ると,オリジナル同様ジャズっぽいアレンジになります。音のでかさからロックのイメージが強いおかもっちですが,おかもっちのYAMAHAネム音時代の恩師は猪俣猛,その頃Bob Jamesとかもやってるわけですから,ま,かなりフュージョン寄りではありますが,ジャズっぽいドラムも十分いけます。^^ そもそもおかもっちの場合,元々フィルにしても手数よりもタイミング勝負なプレイが特徴。手数(技術)は練習で補えますが,タイミング等センスについてはそうそう簡単に培われるものではありません。タイミング勝負系でしかも音質はフュージョン・ロック系というのは,確かにこの新しいルパンアレンジにぴったりですよね。^^
で,ところどころに垣間見る(聞く)ハイハットオープンのキレとかにもシビれるわけですが,ちょっと静かな間奏が入ったあとのキメでは,シンセタム vs. おかもっちのスネアという構図になっております。要するに,電子音 vs. 生楽器なわけですが,シンセ音が味付けに留まり,あくまでナマ楽器が主役というスタンスが,このスネアの音質によって主張されています。^^
なお,ルパン三世はオリジナルは16ビートですが,この曲は微妙にハネてます。これだけの分厚いサウンド(しかも打ち込み先行)全体を1/2シャッフルのリズムでグルーヴさせちゃうというのも多分おかもっちにしかできないでしょう。(くシンセタムのレイドバック感もおかもっちにどのくらいハネてもらうか計算して打ち込んであるからかも。)てなわけで,このCD,おかもっちファン必携アイテムでございます。^^ (直樹ファンにも必携な気がする・・・ベースも凄い・・・。^^; )
それにしてもこの曲,ミキシングバランスもカンペキです。先日,某女性ボーカリストのDVDを買ったんですが,ライブの臨場感を出そうという狙いなのか,バックの音がでか過ぎて,折角歌の上手いボーカリストだったのに途中で嫌になって止めちゃいました。一方,AB'SのInto the Lightは,AB'S初のインストモノといいつつコーラスにしっかり歌詞がついてて歌モノとも解釈できるわけですが,コーラスに留める程度のミキシングレベルであるにも関わらず,アレンジでコーラスが他の楽器とリズムや音域がかぶらないよう調整してあります。おかげで歌詞がすんなり聞き取れます。(さすがまこっちゃん!!! ^^ ) このルパンの場合,コーラスは旋律を担当する大事な役割なので,ホーンの旋律担当箇所と堂々張り合うレベルでがっちし録音されてます。そのコーラスと,コーラスをバックで支えるストリングス等の楽器群とのミキシングバランスが凄い。^^; カンペキにコーラスを押し上げて生かしてます。
ホーンについても,和音構成の中でも際立たせるべき旋律音がしっかり聞こえるように調整してあります。ピアノで和音を弾く場合,和音の中の一音がそれぞれ連続して旋律を構成する楽曲については,その音をちゃんと強く弾くことが要求されるわけですが,複数ホーンセクションの場合も,和音であっても全楽器同じボリュームでは旋律が浮かび上がらないわけで,この曲はそういうレベルのところでも非常に聞きやすくて,アレンジが最高の形で生かされている感を受けます。
しかも,単に浮かび上がらせたい旋律なり楽器なりのレベルが大きいだけじゃなくて,そうじゃない楽器のレベルとのバランスがいいです。例えば,サウンドを仕切るおかもっちのドラムやフレーズに聴きどころの多い直樹さんのベースについても,元々の音質の太さを信頼してミキシング段階で音を上げすぎず,普通に聞くとさほど顕在化しない音量に抑えてあるのにも関わらず,一旦ドラムやベースが聴きたいと思ってちょっと注意を向けると見事にはっきり聞き取れるんですよね。てな感じで,すべての楽器において楽器間のバランスが素晴らしいです。^^ こういうのを聞くと,ライブもいいけどスタジオワークってやっぱいいなあってつくづく思います。ハコの構造,PAエンジニアの腕や客の人数,湿度(!)等に圧倒的に左右されるライブでは,これだけのバランスで音楽を味わうのはまず無理ですからね。いえ,ライブはライブでとってもすっごくいいんですけどぉ。^^;
ちなみにですね,おかもっちはこの年,数原晋のソロアルバムTrumpet Majorにも参加しています(ってか,ルパンのレコーディング日より先に発売されている)。クレジットがIkuo kamotoになってますが ^^; ベースはSHOGUNで今おかもっちと組んでるミッチーさんです。こちらも聴き応えありますので持ってない人は是非買って聞きましょう。^^
本記事を書くにあたり,レコーディングエンジニアの伊豫部富治氏に多大なご協力をいただきました。ド素人のしがない一音楽ファンに過ぎないHarrietの質問に対し,当時の日記等の資料を元に,大変丁寧にご回答をいただきました。心から感謝申し上げます。ありがとうございました。
が!!! だからミキシングが凄いと媚び媚びしてるわけではありません。Harrietはこの音源を最初YouTubeで聞いた時,アレンジの素晴らしさと共にミキシングバランスの凄さに,即amazonでCDを購入しました。聴けば聴くほど凄いことになってますので,バランスにウルサイ(?)AB'Sファンには特にオススメします。^^ しかも,『瞳を忘れないで』(このCDに収録)のおかもっちのドラムが,これまた別項目を起こしたいほど繊細でよろしゅうございます。^^
Charの登場以降数年,「ヒーロー」とまで呼ばれるギタリストはなかなか現れなかった日本。はい,スタジオには藤丸さんをはじめ,凄いギタリストはいっぱいいましたが,テレビにがんがん出て演奏を見せる(魅せる)人がなかなか出現しませんでした。それが,80年代に入り,布袋寅泰が登場,そして,80年代終盤,ついに現れたのが,圧倒的な技術と音を誇るB'zの松本孝弘です。
今回は,Tak Matsumoto...即ち,松本孝弘の4枚目のソロアルバムから。はい,グラミー賞受賞とのことで急遽ご紹介順を変更しました。^^
松本孝弘は元々おかもっちとは浜田麻里のレコーディングメンバー繋がり。Misty Ladyは北島健二が弾いてますが,Blue Revolutionでは全曲松本がギターを担当,Stormy Love(<YouTube)という曲では浜田麻里と共作も果たしています。ちなみに,この曲はキーボードが厚見玲衣,ベースはもちろんナルチョでドラムももちろんおかもっちです。^^
その後TM Networkのサポートを経て,稲葉浩志とB'zを結成,1989年リリースのBad Communicationで火がつき,その後20年間,J-ROCKを牽引し続け,記録を塗り替え続け,現在に至っていることは皆様もご存知の通り。^^ なお,おかもっちは,ボーカルの稲葉浩志とも,1990年にリリースされた近藤房之助のデビューアルバム(ライブアルバム)で共演しています。
さて,このミニアルバムは2002年にリリース,B'zはとっくに人気を不動のものにし,出す曲出す曲すべてヒットチャート1位という状態。そんな中で制作されたこのインストアルバムは,楽曲がかなりバラエティに富んでいて(というか,統一性があんましない ^^; ),どちらかというと,未収録だった人気インスト曲をファンの要望に応えてミニアルバムという体裁に整えた小曲集といった赴きですが,さすが松本孝弘,妥協は一切なしで,トータルの時間こそ短いものの,ギター演奏はかなり聴かせてくれます。ただし,収録曲6曲中最初の4曲はオール打ち込み! 松本孝弘は上述の通りTM Networkのサポートをしていたこともあってか,結構小室哲哉の影響も受けてるらしいので,打ち込みには特に抵抗はないのでしょう。実際,打ち込みのリズムもなかなかいい感じに仕上がっています。
で,その打ち込み4曲の次に入っているのが,おかもっちが叩くこのRiverside Blues。ベースは渡辺直樹,アコピはDimensionの小野塚晃が担当しています。ついでに言うと,6曲目はドラムが山木秀夫,ベースがバカボン鈴木で,しかも篠崎ストリングスを大々的にフィーチャーした壮大なスケールの3連系。こうなって来るともう打ち込んでる場合じゃありません。^^;
てなわけで,この曲は,聞いててギターのメロディーがそのまま稲葉の声に聞こえてきそうなほど(?)見事なB'z楽曲。敢えてB'zの曲にせず,インスト楽曲としてアルバムに収録したのは,こういったメロディアスな「泣き」をギターだけで表現したかったからかもしれません。重ね録りしたギターの音色も泣き,まさに日本のブルース。その泣きをどかどかとナマの音に近いドラムが煽ります。そう,この2002年というのは,おかもっちがスタジオ活動と並行してThe Triple Xとして活動していた時期でもあるんですよね。そのプレイと共通する,飾りのないストレートなドラムが聞けます。
音は完全に今のおかもっちの音。基本のフレーズは,実は打ち込みでやってもそれなりに映えるパターン。しかしこの,ウッドフープ装着スネア独特のリムショットの鳴りとレイドバック感(特に2・4拍目以外のところで入るスネア!)と,荒削りなハーフオープンなハイハットの音色を打ち込みで出すのは無理でしょう。しかし,この曲の泣きの演出に一番貢献しているのはフィルです! そんなに派手な,凄いことをやっているわけではないですが,すべてのフィルが曲に,サウンドに,見事にハマっています。特に2番サビ前の1拍6連のフィル・・・もいいんですが,このフィルの導入部にあたるフラムの使い方がたまりません〜。^^ このあとCodaに入っても比較的流して叩いているだけに,このフラムは楽曲のメリハリづけに非常に貢献しています。6連のフィルもこれによって映えまくり。^^ 最後のサビの直前に出てくる3連のフィルも実にいいです。^^ で,エンディング付近ではリズムキープに徹してベースを映えさせ,最後,静かになる直前もビート感を崩さず,存在感の大きいハイハット(最後はもうハーフというよりかなりオープンにしてるんじゃないかな???)がフィルの際消えないようにちゃんとフットペダルで鳴らして,ハイハットオープンで締めてドラムが終わり,ギターの泣きが楽曲を締めくくります。あくまで楽曲中心,アンサンブル重視,引き立て役に徹する見事なまでにシブいドラミングといえるでしょう。^^
てなわけで,次はいよいよThe Triple Xに行きます。^^
[May 10,2011] ご紹介したいThe Triple Xの楽曲のタイトルが現在の状況にはちょっとどうかなあ???というのがあったため,The Triple Xのご紹介はもう少し先に延ばしました。その代わりがっつしおかもっちのドラムについて語りたいと思っておりますので,もう暫くお待ちくださいませ。
AB'Sが1985年のAB'S-3リリース後活動休止,おかもっちはいくつかの企画モノもありましたが,とりあえず暫く,スタジオ漬けになります。
さて,いよいよ1990年代。80年代中盤にYAMAHAのお店に並んでいたKX(マスターキーボード),QX(シーケンサー),RX(リズムマシン)等はそろえるにはまだ高額で,デジタルミュージックの自作はまだアマチュアの手には届かないシロモノでしたが,その後一気に開発が進み,80年代の終わり頃には本体に相応のシーケンサーを搭載したシンセ登場,いよいよアマチュアが一人でシンセ1台でリズム入りで演奏できる時代に突入しました。あ,もちろん,プロとアマには,「曲が作れる・アレンジができる」の前に「質の高い・優れた」がつくかどうかという点で圧倒的な隔たりがありますが。^^; ともあれ,その後,小室哲哉に代表されるデジタルミュージックが隆盛を極めます。
その同時期に対極とも言える空前のバンドブームも到来。藤井フミヤや氷室京介ら「実力」と「ルックス」を併せ持つアーティストの登場でバンド=アイドルに拍車がかかった80年代ですが,その後「イカ天」というバケモノ番組が現れ,こちらもアマチュアとプロとの境界のような路線のバンドが次々に現れ始めます。日本製の楽器がシンセ(YAMAHA, KORG, Roland)のみならずドラム(TAMA,Pearl),ギター類(Ibanez等)も海外でも評価されるレベルに到達したこと,逆にバブルと円高もあってアマチュアが高価な海外の楽器も入手しやすくなったことも,その側面に挙げられるでしょう。聞くことから演奏することに音楽ファンは興味を移し,コピー演奏の難易度が高いJ-POPは徐々に影を潜め,その後有象無象に出てきたバンドはやがて自然淘汰,B'z, ミスチル,GLAY,ラルクなどに代表される実力派J-ROCKバンドがヒットチャート常連組となります。
こうしてJ-POPは,デジタル打ち込みミュージックとロックバンドに取って代わられるわけですが,一見飽きられたかと思われるこの80年代ゴージャズJ-POP,意外なところで生き続けます。それが,70年後半からじわじわと頭角を現し,90年代に入りついに世界を席巻した日本のポップカルチャーの主役「アニメ」と「ゲーム」の世界。どちらもバーチャルであるからこそ,音楽にはホンモノを使いたい,という作家心もあったのでしょうか。ちなみに,もうひとつJ-POPを支え続けているのがジャニーズです,はい。^^;
てなわけで,前置きが長くなりましたが,今回は名探偵コナンやエヴァンゲリオンで活躍する声優・宮村優子のファーストアルバムからセレクト。といっても,実はこの曲,「アニソンもどき」で,実際には『根性戦隊ガッツマン』というアニメはありません。^^; なのにこんなの作っちゃった宮村優子って一体・・・。^^; しかも作・編曲はアニソン作家として名高い田中公平,つまり,ホンモノのアニソンもどき。^^; 昨今全国的に(世界的に?)注目を浴びてる日本のアニソンですが,実はネットの世界では,90年代後半には既にアニソンや声優を扱ったサイトが多くあったようで,今でも検索すると,製作者の年代が上がり恐らく仕事で多忙になったためか更新が放置されている「どう見ても前世紀からある」アニソン・声優系のサイトにいくつかヒットします。^^; Harrietのこの曲のネタ元,niraさんのサイトも,アイドル系と共に声優系のCDのデータを数多く掲載していました。残念ながら使用サーバー自体の閉鎖により,サイトがなくなってしまいましたが・・・。(泣)
・・・この際歌唱力はムシしましょう。^^; とはいえ,さすが声優,声の質自体はインパクトありますし,歯切れがいいため歌詞が聞き取りやすく,まさに子供向け。そもそもこの曲,歌詞のイントネーションと実際のメロディーに違和感のある箇所が全くなく,恐らく歌詞先行で作られたものと思われます。加えてミキシング段階でバックの演奏の音量がかなり落としてあり,歌モノとして最も聞きやすいバランスに仕上げてあります。これだけの数の楽器を使用しておいてここまで録音レベルを下げるとはなんたる贅沢な・・・。^^; しかもクレジットを見ると,岡本郭男(Ds), 長岡道夫(B), 古川望(G), 島健(Piano)・・・って,島健にコレ(<Bメロのバッキング)を弾かせるのね。。。 ^^; シンセのプログラミングもされてるわりに,ホーンには数原晋グループ,ストリングスには篠崎正嗣ストリングスの名前が並んでます。打ち込み自動演奏なんでもシンセでサンプリングな時代に,いや,そういう時代だからこそ? これだけのミュージシャンを使ってここまでやっちゃうんだぞ! という宮村優子とスタッフの物凄い意気込みを感じます。今は多くの作曲・編曲家が普段からデモを打ち込みで作ってますので,日頃からその限界を感じ,生楽器が醸し出すグルーヴや機械では出せない繊細なワザを強く求める傾向があるのかもしれません。(実際,ゲーム系,アニソン系は一流スタジオミュージシャンの起用例が非常に多い。)
そんな中で,この楽器数と各楽器の音質を見事に縦横無尽に役割で振り分け,きっちりとまとめているのが,おかもっちのドラムの「音質」です。おかもっちのドラムは音がでかいことでも知られてますが(笑),レコーディングではもちろん,音の大きさは録音レベルで調整できます。したがって,殆どのおかもっち関連のCDではドラムの音は特にでかくありません。言い換えれば,おかもっちのドラムは「音量」ではなく「音質」への評価が極めて高いということが伺えます。この,芯が太く厚く,それでいて抜けがよくて余計な倍音や篭りがなくストレートでシャープという比類なき音質は,ホーンやストリングスが入りまくってもサウンドをがっちり仕切り,パーカッションを映えさせ,結果的にすべてのパートの音を生かすのに成功しています。特に,タンブリンを下からがっちりと支え二人三脚状態でビートを醸し出すサビ(Cメロ)のスネアの音質は凄いです。そう,恐らくこの曲でも,この「音」が欲しくておかもっちに依頼がいったのではないかと推測できます。録音レベルを絞ってもしっかり主張できるおかもっちの音は,ロック,フュージョンだけでなく,実に様々なジャンルで求められているわけですね。うふふ。^^
しかしですね,さらに特筆すべきは,スネアの微妙なレイドバック感が醸し出すグルーヴ! 比較的シンプルなAメロで特に感じるこのレイドバック感は,とてもじゃないけどクリックを聞きながら叩いているとは思えません。機械じゃないぞ,ちゃんとナマのドラムが入ってるんだぞ,しかもそのドラマーは凄いオトとグルーヴを出すんだぞ,恐れ入ったか!とサウンド全体が主張しているようで,切れ味のいいスネアがこのレイドバック感を保ちながらバシバシとキマるのを聞くと,もう気分も超!爽快! とってもシアワセな気分になります。^^
ところで,1990年代・・・BBSにも書きましたが,実は元々柳ジョージで書くつもりだったのが,YouTubeで音源を捜したところ見当たらず・・・。^^; 近藤房之助,前田亘輝らのサポートも務めているのですが,このあたりはさすがに音源管理が厳しくオリジナル音源のYouTubeへの流出がありません。いや,まあ,それが本来なのでそれでいいといえばいいのですが,雑誌と違って音楽をダイレクトに紹介できるようになった時代に見合った枠組ってないのかなあ??? と思わずにはいられません。実際,JASRACの解説を読む限り制度としては可能なのですが,非商用サイトのストリーム配信がレコード会社から了承が出ることはまずないらしく,実質不可能というのが現実です。年間いくらか払い,かつ45秒以内カット版でもいいので,正規の形で音をご紹介しながらお伝えできるようになるといいのですが・・・。TT
なお,当サイトでは,おかもっちのセッション情報を随時募集しています。お子様用にアニソンCDを購入された経験をお持ちの方,是非クレジットをご確認いただき,当サイトまでお知らせくださいませ〜。^^
これまでに何度もご紹介した映像です。しかし,現時点でおかもっちがSONOR Signature Seriesを叩いている姿を見られるのはこの堀井勝美プロジェクトのベストサウンドの映像しかありません。てなわけで,敢えてまたこの映像を選んでしまいました。^^; ちなみに,昨年違法音源がごっそりYouTubeから削除されていて,直樹さんも参加されてる野田ユカ「カリブの夢」をはじめ,鳴瀬や是方のソロ等が軒並み紹介できなくなったという裏事情もあります。^^;
さて,80年代,日本は「フュージョン王国」と呼ばれていました。カシオペアの海外ツアー,T-Squareのマジソン・スクエア・ガーデンでのライブ(ってのがあった記憶がある),リットーミュージックのキーボードマガジンには向谷実と和泉宏隆がしょっちゅう登場。あとはYMOの坂本龍一が常連でした。あ,ちなみに,それでもキーボードマガジンでのキーボーディスト読者投票第一位はKeith Emersonだったんですよ。えっへん。^^ そしてその解説には常に難波弘之が登場していました。
その難波弘之をキーボードに,カシオペアの鳴瀬喜博をベースに起用,さらにギターには,野呂一生,安藤まさひろとOTTOTTORIOを結成していた元桑名正博バックバンド・Tear Dropsのメンバーでもある是方博邦を,んでもって,Chicken Shackのメンバーで山下達郎のサポートとしても高い評価を得ていた土岐英史をサックスにフィーチャーしつつ,中央でソロではなくバッキングに徹しているちょっと控え目なおじさん(失礼)こそが,このユニットの中心人物,堀井勝美です。堀井勝美プロジェクトは,3枚目のアルバム発表時,堀井勝美の希望でツアーも敢行し,そのメンバーでベストサウンドに出演した,と2chに書いてあったので ^^; ということはおかもっちも行ったということになります。ドラマー誰だっけって書いてあったので書き込もうかと思いましたが,2chデビューしたくなかったのでやめました。^^;;;
堀井勝美プロジェクトの大きな特徴は,当然ながら「バンド」でないこと。バンドスタイルの場合,セッションを重ねることでバンドとしての音ががちっと出来てくるというバンドならではの醍醐味がある一方で,バンド編成という大きな壁があります。結果,バンドのメンバーをどう生かすか,というところを常に考慮に入れてアレンジせざるを得ません。一方,一人が中心となってサポートを得るスタイルの場合,ただただ楽曲にベストなアレンジを施し,その上で,そのアレンジを生かし切ることのできる予算が許す限りの演奏者を起用できるという強みがあります。ただ,毎回同じメンバーをそろえることはかなり難しく,更に演奏者が一流であればあるほど,ワンテイクでサウンドが出来上がってしまうため,何度もセッションを重ねてサウンドを練り上げていく,ということはなかなかできません。自分が好きなメンバーを集め,好きなように演奏させつつも,ほぼ同じメンバーで継続的に組むことで一体感も体現する・・・プロジェクト化することにより,この両者のいいところ取りをしている点こそが,堀井勝美プロジェクトの特徴であり最大の武器とも言えるでしょう。
・・・というメンバーで組まれた堀井勝美プロジェクトですが,インストの形態であるが故フュージョン色は強いものの,松田聖子などのアレンジが持つきらびやかさを前面に出した典型的な80年代のサウンド。特に80年代後半は,キーボード界ではDX7の登場により,一度に出る音が8音,ストリングスにサスティンを効かせると9音目が鳴った段階でぶちぶちと音が切れていく,という状況から,一度に出せる音が16音と一気に増え,MIDIで複数の音色コントロールもできるようになりました。更に,デジタルシンセが台頭しつつも,Journeyが使っていたことでも有名なプロフィットや,アメリカ・Keyboard誌の広告でDX7とMIDIで繋ぐと音最高!という大胆な広告を出してたオーバーハイムの音源など,海外のアナログシンセも高い評価をもって受け入れられており,メーカーごとにシンセの音もかなりバリエーションに富んでいました。そして,シンセ全盛サウンドをそのままごそっとフュージョンスタイルに取り入れたのがこの堀井勝美プロジェクトというわけです。「バンド」化していたら,もう少しギターの出番を増やすなど,楽器間の出番の調整をしていたかもしれませんが,自身がトップに君臨するプロジェクトのため,それをする必要がない,つまり,この時代に流行っていたサウンドを思うがままこのメンバーで作り得たわけですね。
さて,前置きが大層長くなりましたが,そういうメンバー選択の中でドラマーとして選ばれたのがおかもっち。この曲を収録したアルバム『Ocean Drive』には,他にも石川雅春と鈴木"RIKA"徹が参加しています。で,アルバムのほうは,多くの楽曲でスネアにリバーヴがかけてあって(多分 ^^; エフェクト類よくわかんないの ^^; )ドラムも80年代の音になってるわけですが(笑),それでもハイハットやフィルやバスドラの音,グルーヴで,どの曲をおかもっちが叩いているかがなんとか推測できます。^^ あ,ただしですね,バスドラについてはかなり音を抑えてレコーディングされてる場合もありますので,音量ではなく「抜け」で判断することになりますが。^^; ちなみに,Harrietは,Elisa Street,House of Peninsula, Through the Sky, はおかもっちではないかと思うんですが,皆様はいかがでしょう? CDをお持ちの方,ご意見等お待ちしております。^^
で,このHot Cornerも多分おかもっちかな?と思うわけですが,はっきし言います。このベストサウンドの方がドラムがいいです。なぜなら,原曲ではツンツクツンツク入ってるマラカス(多分)がおかもっちのハイハットを消しているからです!(泣) そう!このベストサウンドの聴きどころは,アルバムでは音があんまし立っていないハイハットがばっちし聞けるところにあります。ギターの細かいバッキング等を聞きたい方はアルバムの方がいいかもしれませんが,ドラムを楽しみたい方はこの映像の方が断然よいです。^^ ま,CDに比べると音がいいとは言えませんが,そんなの聞いてくうちに気にならなくなります。ってか,むしろテレビ映像のほうがバスドラもしっかり主張していて,鳴瀬の重めのベースとマッチしています。考えてみれば,NHKの音楽番組のPAエンジニアともなれば一流中の一流のはず,ミキシングバランスが良いのも当然と言えば当然でしょう!
てなわけで,この映像での聞きところ: まず冒頭のハイハットのキレですね。原曲ではこれが聞けないんですよ。(Harriet的に言えば,アルバムは多少オーバープロデュース気味・・・。^^; ) で,イントロに入る前のフラムでの締めも鮮やかでキマってますよね。んでもって,イントロの最後の堀井勝美がシンセを弾いてる箇所でのAB'Sばりのハットを絡ませたフィルもいいです。タムでドカドカやらずにウラで支えつつもシンセのサスティンがくどくならないよう,キレのいいハットを16ビートのウラで入れてタイトさを加味しています。ここ,CDではタトトタトトトってタイコで叩いてるんですよね。この映像におけるおかもっちの演奏の途轍もないセンスにゾクゾクすると同時に,多分おかもっちはそういう計算をしているわけでなく,無意識にサウンドから判断して無意識にこういうプレイをしたんだろうな・・・と思うと,またまたその突出した才能にぞっこんに惚れ込んでしまう訳です。うふふ。^^ んでもって,サックスソロ箇所のハイハットの音色のタイトさと,その後半で入れるシャッ!のキレのよさ! ほんと,このテイクではハイハットオープンのキレが生きまくっています。シンセのリフを使ったイントロ部ではハーフオープンで押しているので,その箇所との音色の対比も見事ですよね。あとですね,アルバムよりも実はフィルはやや地味目なんですよ。恐らくレコーディングのときは楽譜どおりに叩いたと思うのですが,ライブやこうしたテレビ出演のためのリハを通し,おかもっち自身が他の楽器を生かす方生かす方にフィルやシンバル類の入れ方などを移行させていったと考えられます。言い換えれば,レコーディング時よりもこちらの方が,より「おかもっちぃ」なんですよね。^^ 更に,スタジオとはいえライブですから,やはりアルバムよりグルーヴが強烈です。うん,てなわけで,やはり軍配はこちらのテイク。^^
さて,この堀井勝美プロジェクトの外ではどうなっていたでしょう? まず,鳴瀬は元々浜田麻里のレコーディングメンバーとしておかもっちと組んでいて,1986年リリースの自身のソロ『Stimulus』でもおかもっちを起用しています。1989年リリースのPlayers Pole Position Vol.2でカシオペアのメンバー(野呂,向谷,鳴瀬)とも組んでいて,恐らくカシオペア,鳴瀬加入が決まった際,ドラマーにおかもっちを起用する案も出たのではないかとHarrietは推測しています。ただ,バンドというのはプロモーションやらツアーやらで時間を取られ支出も多いため,超売れっ子スタジオドラマーとして稼ぎまくってるおかもっちを誘うに誘えなかった,そのため実現しなかった,というような図式だったのではないか,とHarrietは大胆予想しております・・・が,もちろん真相は不明です。^^; あと,是方,鳴瀬,難波の3名は,このあと野獣王国というのを組んでます。ここではドラムは小森啓資を起用。ただし,難波さんは米川英之のプロデュースもやってまして,そこでやはりおかもっちを起用しています。きっと網の目のように縦横の繋がりがいっぱいあるんでしょね。^^
余談ですが,おかもっちがトレーナー姿で叩く姿ってのは,今は滅多に見られません。^^ しかも,他のメンバーは相応の服装をしております。どうせドラムは目立たないしと思って会場入りしたら,ドラムセットがちゃんと目立つ場所に設置され,しかも思いの外ばっちし映ってた!てなところかしらん?などとあれこれ妄想にふけるのも楽しいものです。^^
80年代おかもっちJ-POP女性シンガーの部第3弾は,Being系アーティストへの歌詞提供でお馴染みの亜蘭知子の4枚目のアルバムからセレクト。この曲はシングルカットもされ,アルバムでも第1曲目に収録されています。
このアルバムで特筆すべきなのは,なんといっても当時押せ押せフュージョンブームの真っ只中で活躍していたカシオペアのキーボーディスト,向谷実がプロデュースに起用されていること。その向谷,ベースに桜井哲夫と高水健司,ドラムに神保彰とおかもっち,更に,ギターには全曲松下誠を起用!!! ^^ 1984年と言えば,AB'S-3のロンドン・レコーディングの年。藤丸さんが当時,「イギリスではカシオペアとAB'Sは皆知ってた」とどこかでコメントしてましたが,そういうメンバーで制作されたアルバムということになります。
んでもって,この曲は神保彰作曲。そう,向谷実は神保が作ったこの曲に,神保ではなくおかもっちを起用しているのです!!! 神保は当時既にカシオペアの凄腕ドラマーとしての地位を確実に築いていました。その神保が納得しないドラマーを向谷実が起用するはずがありません! 実際,このアルバムでは,神保が自分で叩いてる曲もあります。第一,同じバンドのメンバー同士,ドラマー起用の選択に神保が全く関わっていないとは考えられません。ドラム,自分で叩く? いや,これ,岡本さんに叩いて欲しいなあ。だったら岡本さんに頼もうか,なーんて感じで,神保から提案された可能性だって大いにあるのです! 「Musicians' Musician 岡本郭男」をこれ以上端的に表現できる状況はあるでしょうか。一部妄想も入りましたが ^^; とにかく,おかもっちを起用している曲は,(神保ではなく)おかもっちの「何か」が求められての上だったことだけは確かです。
・・・とついつい熱く書きましたが,楽曲自体はミディアムテンポのシャッフル。全然熱くなく,爽やかそのもの。^^; AOR路線でもロック路線でもない,パーフェクトなJ-POP,まさに王道です。^^
サウンドは,キーボードを全面的にフィーチャーし,誠さんのロックっぽいギターがまさしくリズム楽器として組み合わせてあるのが特徴。高めの爽やかで甘く愛らしいボーカルに他の楽器がかぶらないよう常に中音域にロングトーンのかなりDX7な音色のシンセが入り,もう少し下の音域にギターがtripletのリズムで入り,その中を時折スラップベースが飛んで来る,というアレンジ構成で,殆どシンセの使用のみでゴージャスなサウンドを作り出すのに成功しています。キメが多いのもゴージャスさの演出に一役買っていると言っていいでしょう。
そんな中で,おかもっちのドラムは,基本的にはリズムキープがメイン。軽快にビートを刻みつつ,音質を生かしてサウンド全体の骨格を担う感じになってます。1番に入る前の速いフラムとバスドラを組み合わせたフィルは,リズム自体は他の楽器とアレンジ段階で合わせてあります。が! このキレがたまりませんねえ。^^ このフィルは,上から下がる,もしくはスネア連打によるタトトトトトタン!というフィルと共に,この曲のフィルのモチーフのひとつになっています。サビのキメの前の締めのフラムも効いてます。^^
しかし,なんといってもこの曲で最もおかもっちぃなのは,やはりこのシャッフルのノリでしょう! このスネアの微妙なレイドバック感が生み出すグルーヴの心地よさこそが,まさに向谷実が欲しかったもの,なのではないでしょか。^^ 百聞は一見に如かず,といいますが,この場合はむしろ,百文は一聴に如かず(100文もないけど ^^; )。おかもっち印な無比のシャッフル感,とにかく聴いて味わいましょう!
80年代おかもっちJ-POP女性シンガーの部第2弾(いつの間に部になったんだ?)は,実力派ボーカリストのはずなのにB.B.クイーンズでブレイクしてしまった(笑)坪倉唯子をセレクトしてみました。
坪倉唯子のデビューシングル(シングルは1985年発売)でもあるこの曲は,まさに80年代J-POPバラードの王道。YAMAHAのポプコン出身シンガーのためかアレンジは萩田光雄が担当,その萩田が選んだドラマーが,YAMAHAネムオンの教え子でもあるおかもっち,ということになります。自分が教えた学生が一流ドラマーとして音楽シーンで活躍するようになって,その教え子をこうして起用する・・・って,一体どんな気分なんでしょうね。まさに,教師冥利に尽きる,という感じなのではないでしょか。^^ 収録されたデビューアルバムではドラムには青山純や山木秀夫,ベースには伊藤広規,高水健司らが起用されているので,このアルバムでおかもっちを聞けるのはこの曲だけです。(<誰だよ,1曲のためにCD買うやつは・・・。^^;)あ,そうそう,ベースもこの曲だけ直樹さんなんですよ。^^
さて,この曲でのおかもっちの珠玉はなんといってもフィルです!
Bメロキメの前のシンバル連打でド派手に始まりますが,2度目のシンバル連打後スネア2発のあとのフラムとそれに続く手数と音量を巧みに抜いたタム回しと短いシンバル音,という組み合わせのフィルで,ゴージャスなアレンジを完全にまとめ切り,サビに入る前のフィルは8ビートでのスネア連打をフラムで完結。そのあと続くわずかなブレイク後に入るフィルでは1発目がフラムになってますが,2番では鮮やかにフラム2発でキメていて,より締め感を出してます。サビ後のブレイク部でもフラムでダイナミクスを効かせてます。2番のAメロはサイドスティックが入りますが,途中のシンバルによるフィルは音量を極々小さく抑えて力を抜いたタムとを組み合わせ,Bメロ冒頭の例のシンバルのインパクトを損なわないようにコントロール。2番が終わったあとのギターによるエンディングは,コード進行ごとそれまでと変わってますが,そこに移行する最初のキック2発だけで完全に世界を変えてます。このタイトなキックの音がこれまたHarrietのお気に入りです。^^ スネアのパターンが少し変わってますが,そのシンコペーションのアクセントが気持ちいいです。後半は多分アレンジ段階でギターとリズムが合わせてありますが,そこに合わせ過ぎ感がないのも,エンディング前半の間に入ったパラパラ感のあるおかもっちぃなフィルがあってこそ。短いながらおかもっちのダイナミクスとフィルのセンスが凝縮して味わえる珠玉の1曲です。^^
しかし,この曲,シンセによる効果音やタンブリン(かな?)などなど,細かい音がいろいろ入ってますねえ。^^; そういうのをふんだんに入れられるのも,ドラムがしっかりしてるからってのもあるのではないかと思います。^^
ちょっと時代が前後しますが,このあたりでJ-POP路線なおかもっちをご紹介します。第1弾は刀根麻理子。AB'Sの活動は休止になりましたが,メンバーはスタジオではまだまだしっかり絡んでました。^^; 80年代はまさにJ-POPの黄金期。休止のきっかけはともあれ ^^;;;,表に出て自分たちのアルバムを作ってる場合じゃなくなっちゃった,というのが恐らく一番大きかったのでしょう。このアルバムでは,松任谷正隆組(アオジュン,今剛,松任谷),Paradigm Shift組(松下誠,宮崎まさひろ,富倉安生),藤丸組(芳野藤丸,岡沢茂,おかもっち)プラスあのBorderlineのピアニスト富樫春生がサポートで入ってます。^^;
ところで,刀根麻理子のデビューアルバムは,はりちゃん,聴き倒しております。なぜならバンドでやってたからです。^^;;; ただし,アルバムは当時のバンドのベーシストが買っていて,Harrietは音源をテープに録音しておりました。てなわけで,まさかファーストアルバムで演奏がいきなりVinnie ColaiutaやLee Ritenourだったなんてつゆ知らず〜〜〜。^^; キャッツアイのテーマに起用されたDellingerもVinnie Colaiutaなんですよ,皆様。^^
てなことはともかくとして,デビューアルバムは時代を反映してシンセがかなりびゅんびゅん飛ばしてましたが,日本のスタジオミュージシャンの最高峰を配したこのセカンドアルバムは,1枚目に比べてややAOR寄りに仕上がっていて,ギターの入り方が「ソロか単音バッキング」ってな単純なものでなくなりました。結果,Harrietの所属バンドでは手に負えなくなり・・・。^^; (AB'Sのメンバーを起用するアレンジャーがフツーなギターアレンジをするはずがない。^^; )
さて,このアルバムからは以前「摩天楼物語」をBBSでご案内したように思いますが,やはり「おかもっちフェスタ!」(<また特集タイトルが違っている)として取り上げるなら断然こちらでしょう! なんたって,冒頭で入るハイハットで既に背筋ゾクゾク鳥肌モノ!!! ^^; キーボードとベースの効いたイントロから始まって最後の最後に至るまで,この曲ではとにかくおかもっちのハイハットワークが常にサウンドの要になっています。Aメロ,A'メロ,Bメロ,戻ってAメロ,と,すべてパターンが微妙に変わり,それぞれが繊細に曲に味付け。間奏のハイハットの少しオープンを絡めた音色にややサンバ調のバスドラムがシェイカー(かなあ? ようわかりませんが ^^; )のツクツク音とよく合っていて,シンプルで淡色ながら単調でない,味のあるリズムを聞かせてくれます。グルーヴを損なわないよう敢えて裏打ちを避けた8ビートなスネアでのフィルは,最後ジェフ調に「タタトン」を絡めたものが多くなってて,これがこの曲でのフィルのモチーフにもなっています。エンディング近辺からスネアの入るタイミングに変化がありますが,それも含めて楽曲の雰囲気を生かす味付けに終始,音数で自己PRするなんてコドモなことは一切しません。それでもおかもっちのプレイとわかるプレイ・・・ホンモノのプロにしかできないプレイです。^^
それにしてもこの曲,アレンジもいいですよね・・・と思ってクレジットを見たら川村栄二・・・難波弘之らとATLASというユニットを組んで,そこでも岡本さんを起用されてるお方でした。^^; やっぱ,いいアレンジャーはいいプレイヤーを知る,といったところでしょうか。ちなみに川村さんはATLASで藤丸さんも起用されてます。全体的に短めの音を組み合わせて構成されてるアレンジが,長い音を使ったアンニュイなメロディーと刀根麻理子の声に非常にマッチ。音がタイトで歯切れがよく正確でしかも音色のコントロールが抜群のおかもっちの独壇場ですね。
TUBEのギタリストであり,メロディーメーカーでもある春畑道哉のファースト・ソロ・アルバムの第1曲目。当初鈴木キサブロー,織田哲郎らから曲を提供してもらい,サザン好きのアイドルという印象もあったTUBEですが,曲を追うごとに前田の歌唱力と春畑のギターテクがめきめきと上達し,翌年には『シーズン・イン・ザ・サン』が大ヒット,実力派としての地位を不動なものにします。さらに,春畑道哉はこのソロアルバムで2曲を自作し,その2曲共に直樹&おかもっちのリズムセクションを起用(このコンビでは計4曲サポート)。そのうちの1曲が,アルバムタイトルにもなっているこのDrivin'です。このアルバムで春畑道哉は,土方隆行,土岐英史,島健らをバックに,非常にキレのある確実な技術とともに,のちに『夏を待ちきれなくて』『夏を抱きしめて』などのヒット曲を生み出す才能の片鱗を見せつけてくれます。ちなみに,Fender USAの最初の日本人のシグニチャー・モデルも春畑モデルです。
って,はりちゃん,オリジナルアルバムは持ってないんですけど,一応TUBEST, TUBEST IIは持ってるのよ。^^v おまけに,すべて春畑楽曲であるTUBEST IIの方は聴き倒しております,はい。^^ だから,余計にわかってしまうおかもっちのドラムの凄さ・・・。^^;;;
当時はThe Square(のちのT-Square) VS. Casiopeaってな感じがあって,全員が卓越した技術を駆使しファンキーなフュージョンスタイルを確立していたCasiopeaに対し,安藤まさひろの歪んだロックっぽいギターとメロディアスな楽曲が特徴だったThe Squareもリズムセクションが一新し更なる人気を博していました。春畑道哉の楽曲とアレンジも,そのThe Squareと少し近いスタンス。ギターが前面に出ながらも,それぞれのフレーズのメロディーが非常にきれいで馴染みやすい楽曲が揃っています。ポップさとメローさが漂う楽曲の流れをおかもっちが物凄いグルーヴでプッシュ,いわゆるフュージョンとは一味違うロックな仕上がりに大いに貢献しています。
とにかく余計なフィルなし。フラムでそれぞれのフレーズをきっちりまとめ切るセンス,そのプッシュ感を生み出すハーフオープンなハイハット,タイトかつパワフルなバスドラとともにスネアのリムショットが繰り出すうねりを堪能するのに最適な一曲で,Harrietのお気に入りでございます。^^
記念すべきAB'Sのファーストアルバムの第1曲目。
インパクトのある冒頭から,あまりにも印象的なリフに繋げるドラムの入れ方は,聞いてるだけで「カッチョいい」ですが,間の取り方とそのフレーズ自体のシャッフル感の微妙さのせいで,セッションでやるとなかなか合わず,まさに「なんじゃこりゃ???」の様相。岡本さんがインタビュー中での「(AB'Sファーストは)叩けそうで,叩いてみると意外と面白いことをやっていると気づくと思う」というコメントに思わず納得します。このフィルだけで,AB'Sのおかもっちのスタンスがわかるといっても過言ではないでしょう。^^
このフィルに代表されるような「音数ではなく間とタイミングとグルーヴで曲を生かし切る」・・・このスタンスを最大限に味わえる楽曲のひとつがやはりこのDeja Vu・・・途中から徐々にトランスしていきそうな幻想的な雰囲気のサビでは細かなシンバルワークを駆使し,かつ低いタムで味付けてしっかり低音とグルーヴをサポート,まさにおかもっちの独壇場です。
YouTubeにUPされている写真は,イギリスで発売されたDeja Vuの12インチシングル。歌詞カードもメンバー情報もメンバーの写真もなく,盤に記されてる作詞・作曲者情報のみ。それでもUKチャート80位に2週ランクイン,楽曲のよさのみで高評価されていたことがわかります。そもそも,本国ではGirlだったのに,何故海外で12インチ。。。 ^^; 確か英国の評価のどこかに,ラジオで流すには曲が長すぎた,というのがありましたっけ。^^;
AB'Sは16ビートとハーフタイムシャッフルが多いバンドですが,おかもっちのハーフタイムのハネ方は変幻自在。ぶっとい渡辺直樹のベースとそんな重厚なリズムセクションを背景に高音域で繰り出される芳野藤丸の軽やかなカッティングのハネ具合が見事に一致,そこに松下誠がプログレテイストなコードワークで様々なアプローチで絡み,安藤芳彦がシティ感覚な歌詞とタイミング勝負のロングトーンをRhodesで響かせてAORテイストに味付け,さらにそのサウンドをコーラスで覆い尽くす・・・。そんなある意味実験的でもあるオリジナリティ溢れるサウンドのリズムの要として,おかもっちも極めて多彩な音楽性を駆使し本領を発揮します。
が!!! まだなんですよねー。新しい音楽を模索し世に出そうという意欲にあふれる当時のAB'S,AORといいつつ今のHarrietよりメンバーは皆年下。^^; その「気合いや意気込み」の中に,僅かに若さや蒼さを感じなくもありません(そこはそこで痺れますが ^^; )。一方,今世紀のAB'Sはメンバー全員適度に力が抜け,新しいサウンドを作ろう!ではなく,自然にAB'Sの曲が作れている感じ。派手なソロより裏方が好き,というギター(2名とも ^^; ),スラップから離れ一層スペースとリフとタイミングにより重きを置くようになったベース,それぞれの変容過程が何故かしっかり同方向だったため,結果的により緻密なアレンジを楽しむことができるようになりました。そんな複雑に織り成す今世紀のAB'Sについては,この連載の最後に再び取り上げる予定です・・が,果たしてこれ,今年中に終わるでしょうか。心配です。^^;
次回もまだ80年代のおかもっちを探ります。
YouTubeにUPされていた音源をご紹介していましたが,削除されましたので・・・。^^;
なお,このアルバムは現在でも入手可能です。AB'Sファンには超!オススメですので,是非下記のリンク先等で試聴されまして,CDを「買って」お楽しみいただけたらと思います。YouTubeは試聴に留め,いいアルバムはちゃんと購入し, 素敵な音楽を届けてくれるアーティストやミュージシャンをしっかり買い支えていきましょう! ^^
下田逸郎作詞,桑名正博作曲,芳野藤丸編曲。桑名晴子というと,どうもあの声に騙されて(?)とってもロックなシンガーというイメージがありますが,ファースト・ソロ・アルバムでカバーされたこの曲を聴くとAOR系も実に上手く歌う素晴らしいシンガーであるということが改めてわかります。^^
藤丸さんのファーストソロのリリースが1982年7月21日,桑名晴子のこのファーストアルバムのリリースが同年11月25日,AB'Sのファーストシングルの発売が同年12月5日,AB'Sのファーストアルバムのリリースが翌年1983年1月21日。てなわけで,恐らくAB'Sと桑名晴子のファーストは,レコーディングやリハが殆ど前後もしくは並行していた可能性があります。実際,このアルバムでは,バンドとして新たな出発に踏み出そうとするメンバーの一体感のある素晴らしい演奏が随所で堪能できます。むしろ,AB'Sでは聴けないAB'Sサウンドがここで聴ける,といっても過言ではありません。(そうか? ^^; )
アルバムのトリを担うこの曲は(実際にはこの曲のアコバージョン(松下誠編曲)がトリですが,曲は同じ!(アレンジ競作?)),ボーカルのみならず,ギター,ベース,ピアノ,エレピ(<多分安藤さん),コーラス,そして何よりもアレンジがまたすっごくいいわけですが,その中でひときわ光っている(ただしぴかぴかのいぶし銀!!!)のが,やはりおかもっちのドラムでしょう! スネアのしっかりとした「タメ」,イントロの締め(歌が入る直前)を始めとするブレイク箇所でのシンバルワーク,Aメロのハイハットも素晴らしいですが,何よりも凄いのが,すべてのフィルが曲に「完璧に」はまっていること。余計なことはしないけどスパイスの必要なところには必要なだけ音数・リズム・音量(ダイナミクス)・パーツ(ハットかタムかシンバルか)を入れたそのプレイは,アレンジの中で,楽曲の中で聴いていくと,徐々に鳥肌が立ってきます。藤丸さんのファースト,ファーストのライブ,AB'Sのレコーディングだけでなく,それらに並行して行われたこのセッションも相俟って,おかもっちの今のスタイルが確立したのではないかと思われます。
Harrietが選ぶおかもっちファン必聴盤トップ10に入るアルバムです。^^ あと9枚,まだ決めてないけど。^^; これ,ナマで聴いてみたいなあ。ナマで聴いたら凄いだろうなあ・・・。
んでもって,このアルバムがThe Triple Xのライブの打ち上げで流された時に岡本さんが「カッコいいじゃん,またやろうよ!」と言い,それに呼応して藤丸さんがメンバーに声掛けをして,AB'Sの再結成に繋がった・・・と,藤丸さんがギター・マガジンのインタビューで答えてました。つまり,このアルバムがなければ,SINGLEもNEWもBLUEもなかったかもしれないわけで・・・そういう意味でも非常にありがたい(?)アルバムです。^^;
てなわけで,次回はいよいよAB'Sです。どうぞお楽しみに。^^
はい。ついに出ました。日本の,いや,世界のといっても過言ではない(実際,各国でmp3配信されている)AOR史上に燦然と輝く芳野藤丸のファースト・ソロ・アルバムのA面第1曲目。冒頭のカッティング4小節で藤丸ファンならノックアウトされ藤丸ファンになった方も多いことでしょう。^^ え? 普通藤丸ファンはSHOGUNから聞いてるから今更そんなことはない? しかし,AB'Sにノックアウトされたあと遡って聞き始めたHarrietは,このアルバムのこのカッティングとこの声にダブルノックアウトされちゃったのですから仕方がありません。以降「藤丸さん」のあとにハートマークをつけてお名前を呼ぶようになります。いやあ,絵文字が使えず残念ですぅ〜。^^
さて,AB'Sを生むきっかけとなったこのアルバムでのおかもっち,ラテンパーカッションやハンドクラップが随所に使ってあるせいもあり,かなり抑えたプレイになってます。とはいえ,聴き所は満載。この曲でも,1/2シャッフルの心地よいグルーヴ,ジェフ・ポーカロな「タタトン」(きゃあっ!)を随所に絡ませたフィル,サビでの連続オープンハイハット・・・特に(タイコ類ではなく)ハイハットをラストに絡めるあくまで楽曲中心のフィル(2:04 次の第1小節目の藤丸カッティングが1拍目から映えるようにする配慮かと思われるけどきっと無意識)に,おかもっちのドラマーとしてのスタンスが明確に現れています。さらに,ライブ映像を見ると既にこの曲ではおかもっちはマッチド・グリップに。ついに「今のおかもっち」の原型が出来上がります。
といいつつ,まだAB'Sに行かないんですよねー(うふふ)。^^ ベースやパーカッションがかなり前面に出ているこの曲もおかもっちのスタンスをがっつり楽しめますが,もう1枚,AB'S以前のリリースでそれが楽しめるアルバムがあります。そう,アレです,アレ。^^
実はですね,その絡みもあって,最初はこのアルバムからは,One Shot Ladyをご紹介しようと思ったんですよね(<斉藤ノブとの絡みなんて,Jeff PorcaroとLenny Castroみたい!)。でも,まあこのアルバムは別にページを起こして全曲ドラム解説をやってもいいな,と思い直し,今回はエポックメイキングなWho Are You?に落ち着きました・・・といったらもうお分かりですよね。^^ てなわけで,次回もお楽しみに〜。^^
スペクトラム時代のおかもっちは超多忙。だいたい,約2年半(レコーディング時期含む)の活動でオリジナル・アルバムを5枚リリース,全国ツアー3本+ポートピア,西武球場,FINALなどのライブをこなし,更にテレビ出演も。サザンが1980年1月から6ヶ月間「レコーディングに専念」しテレビ出演をしなくなったため,同じ事務所のスペクトラムが無茶なスケジュールを余儀なくされたのもしれません。
そんな中で,スタジオ時代にサポートしてきたアーティストの方々のオファーを断らざるを得なくなったおかもっちですが,スペクトラムのメンバー以外でこの時期にサポートしている数少ない(というか稀な)アーティストが山本恭司です。
山本恭司はヤマハネム音楽院時代のおかもっちの同級生で,寮でも同室,2段ベッドの上下で寝る間柄(?)。^^; 松下誠,おかもっち,エレクトーン担当の女の子とバンドを組んでYESのコピーなんぞもやっていました。愛奴への参加が決まっておかもっちが寮を去るとき,また一緒にやろうと誓い合い,出会いから6年目にしてついに山本恭司のファースト・ソロ・アルバムでのレコーディングで共演が実現します。山本恭司は皆様ご存知の通りBOW WOW(一時"VOW WOW"表記)のギタリストですが,1980年には既にMusic Life誌でギタリスト部門1位にランクされ,ハードロックギタリストとしての人気を不動のものにしていました。
山本恭司のファースト・アルバム"Horizon"は,ベースに渡辺直樹を起用,スペクトラムに近いリズムアレンジが楽しめる楽曲が多い中,この曲ではおかもっちはタイムキープをメインに据えつつ丁寧にハットで味付けし,後半ではバスドラで盛り上げダイナミクスを効かしつつ,山本恭司のハスキーなボーカルと,歪んだエレキの音にアコギ & ストリングスでロマンチックに仕上げたアレンジの妙を際立たせるドラミングに徹しています。
さて,この山本恭司,おかもっち & 渡辺直樹という「"Horizon"コンビ」(by 山本恭司)は,2002年に今度はライブで顔を合わせます。これにあのグルーヴとあの音とあのシンバルワークが加わったドラム・・・一体どれほど凄まじいライブだったのだろうと思うと,もっかいやって〜とおねだりせずにはいられません〜。^^;
スタジオでの仕事はバンドと違い,いろんなミュージシャンと演奏する機会を持ちます。そしておかもっち,どうやら,一緒に仕事をする他のミュージシャンからも高く評価されていたようですが,その一人が芳野藤丸。新しいバンドを組むのにドラムを探していた直樹さん(渡辺直樹)に相談された藤丸さんがおかもっちを推薦,直樹さんはスタジオワークで一緒になった際,岡本さんにデモテープを聞かせ,サウンドを気に入った岡本さんが加入を承諾,この時点で(かどうかは不明ですが ^^; )「スペクトラムのドラマー岡本郭男」が誕生します。
ちなみにおかもっち,スタジオ時代は愛奴時代同様「岡本あつお」名義で仕事をしていたようなので(Wikiの松山千春の項に平仮名表記で紹介されている),今のような漢字表記になったのはスペクトラムへの加入がきっかけだったのでは?と勝手に推測。実際,スペクトラム時代はサインも変わります。(解散後には元に戻ります。^^; )
さて,ホーンセクションを前面に配したスペクトラムは,ブラスロックバンドと紹介されることが多いですが,8ビート感を残して極上のJ-POPに仕上げた「トマト・イッパツ」をはじめ,おもいっきしファンキーな「ACT-SHOW」,ラテン色の強い「夜明け」,AORの香りも漂う「パッシング・ドリーム」等,実際の楽曲テリトリー(ジャンル)はかなり広くなっています。そんな中で,高い演奏技術を持つミュージシャンにより日本でも始まりつつあった「クロスオーバー」(のちのフュージョン)の一端としてカウントされてもおかしくない楽曲が,コンセプトアルバムとも言える3枚目のTIME BREAKに収録されます。それがこの「あがき」です。
神戸・ポートピアのライブでは,おかもっちは,複雑なキメ部のリズムを確実に支えながら味付けをしていくイントロでのスネアのキレ,スリリングなハイテクベースが入る直前のスネア4発連打のダイナミクスとエレピソロに入る前のフラムでの締め(この次に一瞬スペースを入れることで世界を変えている),エレピソロでのバスドラの音質とハイハットワークとフィル等,ドラム要チェック箇所数知れずといった風情のドラミングを披露,このハイテク楽曲においても何の差し替えも必要とせず演奏できる技術を持つことをまざまざと見せつけます。
最年少でしかも遅れて加入したため殆ど発言権がなかったと思われる「愛奴」,基本的には職人として依頼どおりのプレイが期待される(つまり自分の感性やセンスを反映させる場ではない)スタジオの仕事と違い,スペクトラムは,初めておかもっちが思うままのプレイができる場であったはず。実際,今のおかもっちのいろんなテイストがこの頃のプレイの随所に見られます。
ところが,おかもっちのドラミング全体がここで確立されたのか,というと,実際にはそうではありません。なぜなら,スペクトラム解散後おかもっちはグリップを変え,グルーヴ系ドラマーに転身したからです。
このドラミングにおかもっちが満足しなかったのは何故なのか・・・。このコーナー,まだまだ続きます。^^
愛奴解散後,休学していたYAMAHA合歓音楽院への復学を考えたおかもっちですが,そのドラムを評価されスタジオ入り。ラディックのセットは愛奴解散時に売ったため,新たにYAMAHA YD9000シルキーブラウン(REDさん推測による)を購入。いよいよスタジオ・ミュージシャンのキャリアが本格的に始まりました。^^
チェリッシュ,布施明のハワイ公演,当時相応に有名どころだったアーティストの皆様からお仕事の依頼があったようです。素人考えですが,まだ駆け出しのスタジオミュージシャンにこれだけのメンツから早々仕事が来るとは思えません。業界ではかなり初期の頃から(ひょっとしたら愛奴のアルバムが出た頃から)かなりの評価を得ていたのではないかと推測できます。^^ ま,スタジオ入りするべくしてスタジオ入りしたというか〜。^^
そんなスタジオ時代初期に恐らく最もヒットしたおかもっちサポートの楽曲がこの「季節の中で」。Aメロのハイハットワークや,1:50あたりのフラムを絡めたフィル(特にそのフラムを入れるタイミング(きゃあっ!))等に,今のおかもっちドラムのテイストがしっかりと見えます。^^
なお,松山千春のこの当時の楽曲をあと数曲サポートしているはずなのですが,あいにくデータが手元にありません。実は松山千春,レコード会社を移籍していることもあって,初期のアルバムがそのままCD化されておりません。^^; Harrietがたまたま生協限定(!)で入手した初期の楽曲のベストにも,演奏者のクレジットがありませんでしたの。TT てなわけで,引き続き(のんびりと)探索したいと思っております。TT
1975年7月26日,日比谷野音で「サマー・ロック・カーニバル」が開催されました。その中の出演バンドのひとつが愛奴,そして,このステージこそが,おかもっちがプロのドラマーとしての初舞台でもあります。^^
愛奴は元々は吉田拓郎のバックバンド。浜田省吾はそこでドラムを担当していましたが,ドラムではなく歌に専念したい,という気持ちが強かったため,このステージでYAMAHA合歓音楽院出身の青山徹の後輩に当たるおかもっちを起用しました。なお,愛奴への正式加入に際し,関係者の方に革製のスティックケースをいただいています。
・・・てな感じでおかもっちをプロの道に引きずり込んだ浜田省吾は,間もなく愛奴を脱退しましたが,翌年に制作したファーストソロアルバムでも岡本さんを起用。愛奴のセカンドアルバムより先にリリースされたため,愛奴ではなく「スタジオワーク」がおかもっちのレコードデビューとなります。^^
このアルバムは初レコということもあって緊張ぶりがなんとも初々しいですが(かわいい〜 ^^ ),5ヶ月後にリリースされた愛奴『Love in City』では,今のおかもっちの「原型」を十分に感じ取れます。^^