AB'S: Deja Vu
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このコーナーでは,AB'Sのファーストアルバム「AB'S」のDeja Vuでのおかもっちのプレイを見ていきます。
Deja Vu
Yoshihiko ANDO/ Naoki WATANABE
Key: Em
Intro(2)-Intro(3)-Intro(4)-A-A'-B(小間奏)-B'(歌)-(小間奏)-Guitar solo(1)-Guitar solo(2)-(小間奏)-A-A'-B'-B'-(Medley to Dee-Dee-Phone)
Sound
AB'Sの代表曲。出だしは割合派手ながら,Intro(2)からは一気にシブくなります。テンションコード・オンパレードのコード進行にも全く動じない(?)とんでもないフレーズで構成されたお馴染みのリフは,ギターとベースのユニゾン。バックのギターが不可思議な効果音を出して,曲の雰囲気を幻想的に。Intro(3)から入るギターのストローク(2小節フルに響かせてます)でのコードワークが更に聴き手を幻想の世界へと導きます。カッティング・ギターの低めの音域をカバーするかのようにさりげなく高音域に入るエレピも絶妙。
Aメロ部では1オクターブ違う高さでのユニゾン(といっていいのか?)ボーカル。比較的音域の低いこの曲でフォルセットでのボーカルが実にいい雰囲気。A'から入るストリングスの音色もきれい。Bメロ部分がインストゥルメンタルになっていて,B'で歌が被って来るというちょっと変わった構成が,透明感のあるギターとキーボードの音と相俟って,とにかくシブくてカッコいい!!! としか言いようのない超名曲になってます。
AB'Sの曲はとにかく,音域と音質と音の厚みのバランスが,素晴らしいですよね。こういうアレンジが楽しめるバンドは他にはありません。
Drum Performance
- Intro(1)
- イントロ・・・というか,オープニングというか・・・というこの箇所,実はこの曲で最もドラムが激しいんですよね。(笑)これ以降は,「まだ20代なのにここまでシブくていいのか,おかもっち?!」と言いたくなるほど(?)シブくなります。ということで,唯一派手なこの箇所のフィルを見ていくと・・・。まず1小節目はシンバルから6連符でのタム連打,シンバル,シンバル,次の小節では,シンバル,スネアのフラムとタム2打の3連,シンバル,シンバル,3小節目がシンバルで一旦ブレイク。その響きがまだ残るところで,おもむろにソロのフィルが入ります。このフィルはスネアのフラムとバスドラのみの構成ですが,ここまでのドラムと全く違うパターンにして,ハーフタイム・シャッフルのリズムに聴き手をいきなり引きずり込みます。リズム・コントロールが鮮やかで,とにかく非常に印象的なフィルです。このフィルはそこから,クローズド・ハイハットの短い連打で繋げ,オープンで響かせたあと,スネア1発で完結。あとは,ハイハットオープンの「シャッ!」でIntro(2)へと繋げています。この「シャッ!」のタイミングがこの曲のドラムのテーマ:「2小節1まとまりで,次の1まとまりに入る直前に何らかのインパクトを入れる」,の序章のような感じ。(これがIntro(2)の冒頭で,弱起になっています)。なお,このIntro(1)の最初の小節,1拍目と2拍目のウラのみ,ハイハットをペダルで入れてます。
- Intro(2)(3)(4)
- ベースとギターのユニゾンでのリフが始まる箇所。弱起で始まったハイハットは,その後,このシャッフル・リズムを8拍でカウントした場合のウラ部にアクセントを入れてしっかり入っています。スネアのタイミングは2・4拍目及びハーフタイム・シャッフル最後の音符の部分。この箇所は,2小節単位でカウントするとバスドラがスライド奏法での速い2連(小節のどしょっぱつとその直前&3拍目とその直前)が入っているのが,4セット目だけ最初のバスドラがスネアに取って代わられた形です。この4セット目の「最後のスネアの直後に1拍目のバスドラが入る」箇所が非常にタイトな感じがします。特にIntro(3)では2小節フルに響かせたギターのアタマとタイミングが揃うので,更に曲のソリット感が増します。Intro(2)から(3)に移る際もフィルなし!(笑) ひたすら淡々と叩くことでこのソリッド感が保つとと同時に,効果音のようなギターやリフやキーボードの音を完全に楽曲に活かしています。ギターがカッティングになる(Intro(4))前のフィルの前振りは,バスドラをタイミングを変えて2発入れ,その後フラムとオープン・ハイハットのみというシンプルな構成。そして,歌に入る直前ですら,スネアでのちょっとしたフレーズとハットの鋭い「シャッ!」のみ!!! けど,手数の多いフィルよりもよっぽど印象的で断然カッコいいです。
- A/A'メロ部
- Intro(2)(3)と基本的には同じ。ベースも全く同じフレーズの繰り返し。A'に入る前のフィルもスネアのフラム・タム一発・フラム・(わずかに「間」!これがいい!!!)・「シャッ!」,と極めてシンプルですが,やっぱりカッコいい(こればっか!)。A'メロのドラムパターンもAメロと同じです。Bメロに入る前は「タムのフラムとタム」「シャッ!」「前と同じ組み合わせの2種のタム(ただしフラムなし)で各1発」と,音数を完全に抑えてます。ただし,かなり高めの音のタムを使ってアクセントをつけています。
- Bメロ部(Instrumental)
- この曲でのドラム,激しい箇所はあくまでイントロですが,やたら小技が効いているのがこの箇所。まずライドで「カーンカンカ・カーンカンカ」としっかりリズムキープ。ここは,2小節単位で微妙な変化があって,1小節目は2拍目がタムのみ,4拍目はその直前のバスドラ+低いタムの組み合わせでの「ドトン!」。で,2小節目は2拍目・4拍目共に直前にバスドラを入れた後にタムで合わせています。各小節とも最後(というか,キメというか)はシンバル。で,次の2フレーズ目はこのパターンのバリエーションで,3拍目のちょっと後にもうひとつタムが入りますが,1・3小節目は割合高音域のタムで,2・4小節目は中音域くらいのタム,と叩くタムを変えていて,非常に細部にこだわったドラムになってます。このフレーズの最後はタムのフラム。
- B'メロ部(サビ)
- 印象的なコーラスを盛り上げているのが、ダイナミクスをつけた6連速叩きハイハット! もちろん,シャッフルリズムをキープするバスドラもBメロ部同様タムを入れる直前に。間奏前のフィルはタム流し後スネア完結。
- 間奏・ギター・ソロ部
- 淡々。ひたすら淡々。ただ淡々。(笑) あくまで他の楽器のバックに徹していますが,それでもドラムがこんなふうに同じフレーズを淡々と続けると,逆にちょっとしたトランス感が出てきます。このトランス感がキーボードやベースのリフとギターのエフェクターの効いた音色に合って,より一層曲を幻想的に。フレーズの変わり目はオープンハイハットの「シャッ!」のみ。といっても,この「シャッ!」が非常にキレがいいので,これだけで十分カッコいいです。ギター・ソロが終わるところはバスドラメインのフィルで,間奏が終わる直前は,バスドラとスネア。ここでも弱起(次への導入部)はオープンでのハイハット。
- Ending
- B部の前半と同じパターンですが,徐々にボリュームが大きくなり,ドラムの音は短いタイムラグでのエコーがかませてあります。
Something Extra
「AB'Sと言えば・・・?」と聞かれたらこの曲を挙げるファンも多いことでしょう。私も,もうこの曲は多分数百回聴いていると思うのですが,こうしてサウンドを改めて聴くと,まだまだ気づかなかったことがあったのが分かって,正直結構がっくりしました。(笑) でも,当時はLPをカセットに録音して,ボロいカーステレオやラジカセで聴いてたんだし,と言い訳しつつ開き直って・・・。
それにしてもこの曲,こんなにドラムがカッコいいとは随分長い間気づきませんでした。なんせベースやギターばっかり聴いていたものですから・・・。でも,しょうがないですよね,だってベースもギターもものすごくカッコいいんだもん! で,やっぱり,これだけベースやギターをこんなにカッコよく聴かせちゃうこのドラムの音数の少なさと叩くもの(タムかハットかシンバルか等)の選び方がスゴいんだと,これまた改めて思うのです。(その意味では,キーボードもすごい!) 普通,テクニックがあったら,どうしても手数を増やしたくなると思うんですけど,音数減らす方が実はセンスとリズム感を問われるんですよね。この曲の場合は,キレのいいハットの「シャッ!」が印象的ですが,これもタイミングだけでなく回数や入れる箇所までの総てが絶妙だからこそ,これだけで曲をここまでソリッドかつスリリングにしてしまえるのだと思います。
ところでこの曲,最後,ボリュームが大きくなるので,いつも慌ててボリュームを下げる羽目に・・・(学習能力ゼロ)。みなさんはどうしてらっしゃいますか?
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