New: Can You Keep It Up!?
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このページでは,AB'Sが2005年にリリースしたアルバム「New」のCan You Keep It Up!?でのおかもっちのプレイを見ていきます。
Can You Keep It Up!?
Yoshihiko ANDO/ Atsuo OKAMOTO
Key: E♭
Pre-intro(session)-Intro-A-A'-B-B-C(サビ)-Keyboard solo-Guitar solo(M)-B-B-C-Ending(Guitar solo(M/F?))-laughter
Sound
ミディアム・テンポのハーフタイム・シャッフルで,このアルバムで最も長い曲。一聴するとちょっとL.A.サウンドっぽい感じで,これまたこれまでのAB'Sにはちょっとなかった感じです。(といっても,アレンジの緻密さとラフさのバランスの良さはまさにAB'Sそのものですが。) イントロのギターは誠さん。Aメロ部では少し歪ませ気味の音で中音域を支えている藤丸さんのカッティング・ギターが,澄んでいるけどキラキラサウンドではない落ち着いた音色でゆったり入るキーボードといい感じで絡んでいます。A'部では更に誠さんの単音のしゃれたリズムギターが絡んできますが,あくまでお互いの音を尊重したアレンジで,非常に洗練されたサウンドになっています。コーラスが素敵なサビ部は,キーボードがサウンドをしっかりバックアップ。ピアノ・ソロは,やや不可思議な雰囲気のする非常に印象的なフレーズになっていて,他の楽器はタイム&リズム・キープの役割に徹していますが,特に誠さんの拍子をとる様な感じで入っているこのギターが私はとても気に入っています。ここでは藤丸ギターはサウンドの厚みをバックアップ。
で,この曲全体を通して最も映えてるのはベース! 直樹さんっぽいフレーズ満載です。どの箇所のベースもそれぞれにおしゃれで素敵ですが,私はサビ部のベースのフレーズがいちばん好き! エンディングのベースもすっごくいいです。このアルバムで唯一エンディングがきちんと決まっていない曲。(笑) なお,1番のA'メロ部はおかもっちがリード・ボーカル。誰かに歌えと言われたのか,おかもっち自らが歌いたいと手を挙げたのかは不明。
Drum Performance
- Pre-Intro.
- 本来なら録音されない「グルーヴを作る過程」が聞けます。常にカウントというわけではなく,こんなふうにセッションしながらグルーヴを作って,後でその部分を編集で切るということもあるんですね。この本来カットされていただろう部分からゴースト・ノートがいい感じで入っていて,ここだけ聴いていても既に非常に心地良いです。やはりシャッフルでグルーヴを出すのにはゴースト・ノートは不可欠なのでしょうか。
- Intro.
- 例によって,ライドとハイハットのダブル。ライドで「カ|カーン・カーンッ(カ)」と入る隙間(8ビートでカウントした場合のウラ部)にハイハットを入れてます。スネア直後のバスドラがこの曲全体を通していいバウンスを出してます。
- Aメロ部
- ライドの音がなくなり,スネアのゴースト・ノートが入ってきます。ハイハットも非常にいい感じで,8ビートのウラ部にアクセント,という基本パターンの間に小技がしっかり入っています(「ン・チ・ン・チ・チッチチッ・ン・チ」というパターンを更に遊んだ感じ)。そして,その小技とゴースト・ノートが入っていない隙間に,たまにバスドラがパターンを崩して入ってます。A'部(おかもっちのボーカル部)では,12小節目の4拍目にしっかりシンバル。Bメロに繋げるためのフリになっています。フィルは,A'メロの終わりからちょうどベースがリズムパターンを少し変えてくるところなので,そのフレーズをジャマしないような感じで入っています。
- Bメロ部
- ベースが一気に直樹節になってくる箇所。ドラムは基本的にAメロと変わりませんが(ゴーストノートも効いたまま!),後半部ではハイハットは時折オープンをはさんできます。4拍目直後バスドラはここでも効いてます。この曲,結構随所にドラム,遊んでいる感じがしますがどうでしょう?フィルはスネアで少し入れるパターンと,シャッフルリズムのタム回しですが,適度に音を抜いて重くならないようにしてあります。繋ぎはシンバル。
- Cメロ(サビ)部
- コーラスがかなり厚い箇所。元々コーラスが厚い分,サウンドを薄めにしてあるのかもしれません。サビ部にもかかわらずドラムは割合控え目。ここの部分の直樹さんのベースのフレーズは,フレーズのしっぽを除くと8ビート(といっていいのか?)のリズムになっていて,スネア直後バスドラはベースともタイミングをはずしてありますが,それが却ってグルーヴの相乗効果になってる感じがします。フィルはやはり音数を控えたタムで,ピアノ・ソロへの繋ぎは十分に響かせたシンバルと1拍をフルに使ったハイハット・オープン一発のみ!
- 間奏(ピアノ・ソロ)
- 私がこの曲のドラムでいちばん好きな箇所がこのキーボード・ソロ部のシャープでソリッドなハイハット。(笑) アクセントを効かせながら時折速い3連符を刻みつつ,オープンも入れて更に変化をつけています。バスドラは,低音域を固めているベースをサポート。2小節ごとに4拍目に入るスネアも,流れるようなピアノソロのいいアクセントに。ここのハイハット,上でも書きましたが,これだけしっかり音が鳴っているのに,全然ピアノソロのジャマをしていません。むしろ,山田さんが意識的にリズムを崩し気味に弾くソロを,しっかりとリズムを刻むことで逆にその崩しを際立たせている感じ。誠ギターが刻む中音域でのリズム・ギターの音質も,ハイハットとよく合っています。フィルは1拍目2発のバスドラとタム一発できわめてシンプル。キーボード・ソロを最後の最後まで聴かせてから締める感じになっています。
- 間奏(ギター・ソロ)
- 再びライドとハイハットの両刀遣い。ライドでシャッフル・リズムを打ちながら,ハイハットもペダルでしっかり鳴らして,さらにスネア打ちの合間に定番の「シャッ!」とオープン。更にその間に,バスドラとスネアを絡めたフィルも入れてます。間奏の最後のフィルもモチーフである「適度に手数を抜いたタム」ですが,最後はスネアとハイハットオープンを持っていって,歌部への繋ぎはシンプルにしています。ここもサウンドをあまり重厚にしていないせいか,ゴースト・ノートがよく聴こえます。
- 間奏後のCメロ部
- フィルのパターンが派手になって,6連符の速叩きが入り(カッコいい!!!),キメ部ではシンバル連打。最後は,音数は多くはないですが,フラム等ラフ系のテクを多用したパターンを変えたフィルを持ってきて,そのまま長ーいエンディングに突入します。盛り上がってはいますが,リラックスした感じは終始変わりません。
- Ending前のB'メロ部
- 最後が2拍多めに取ってありますが,ここの前のフィルは地味目にしてしっかりと「間」を作ってEndingへ繋げています。Endingまではハイハット。
- Ending
- まずは定番のライドを忙しくたたきながらのハイハット味付けパターン。ハットの味付けがない部分はゴースト・ノートが入ったままです。3フレーズ目からストリングスが入ってサウンドが厚くなりますが,ここからライドの使い方を4拍ウラ(ただし少し変化もつけてる)に変えて,ハイハットも入りっぱなしになり,クラッシュ・シンバルの回数が増えます。ライドのパターンはこのまま続いて,フィルがちょっとハイ・テンションな感じに変わってきます。まずはフラムのみ,次に恐らくフェードアウトを意識した6符の速いタム流しが入り,ダメ押しにシンバル連打。バランスを考えるドラマーほど,エンディングになるとフィルが派手になっていく傾向があるようですが,やはり歌がない(=楽器がひとつ(AB'S の場合はハモりが多いので複数)抜ける)ということで,サウンドが薄くなるため,本能的に多めに入れたくなるのかもしれません。
Something Extra
エンディングに入っても演奏がなかなか終わりません。笑い声の中に聞こえる「なおきー!!!」という叫び(?)と,「ごめんごめん!」という声から,誰が何をして(しなくて)こうなったかを推測するのも楽しいです。ちなみに他の楽器は,いつまで続けるんだろう???という戸惑いが見られます(笑)。ギターの音が一旦止むとか。(笑) ドラムに至っては,6連フィルとと次のシンバル連打自体,多分フェイド・アウトを意識していると思うのですが(ノッてるわりには冷静),その後もっかいフラムでフィルを入れて,最後は山田さんのキーボードで多分雰囲気を察したのかそこでロールで濁してます。(笑) なのに,どうもいちばん笑ったらしい山田さんのキーボードが,そのやめる寸前のところまでは,途切れやためらいを感じさせる箇所がありません(さすが!)。この曲はエンディングのギターが実に心地良く,永遠に聞いていたいくらいなので,個人的にはこの長さはまさに最適。なお,最初におかもっちの長ーいカウントの声が聞こえていますが,私はドラマーのカウントを取る音や声が結構好きです。その中に既にグルーヴを感じませんか? (声がいいからカウントもよりカッコいい!) とにかく一発録りのグルーヴのよさとスタジオでの雰囲気もろもろを楽しめるというファン垂涎のテイクになりました。このまままるっとアルバムに収録した誠さんは偉い!
ところで,この曲ではA'メロでおかもっちがリードボーカルを取ってますが,マイクはヘッドレストは使わず回すタイプのスタンドを使用。ライブでは自分が歌い終わった後,(他の人がまだコーラスがあるのをよそに)ちょっと手が空いた隙に,さっさとマイクを後ろに回しちゃっていました。やっぱ,ジャマなんですね。(笑)
なお,この曲,ライブで,歌詞が最初のフレーズのみ英語で,おかもっちの担当箇所からいきなり日本語になることが話題になっていました。実は私も,最初歌詞カードを見ないで聞いたので,「ゆ・め・なら」を,You may not la...? ん?動詞はなんだ?と思ったら次が「このまま〜」だったのでコケそうになりました。もっとも,私は車でCDに合わせてハモるのが大好きなので,歌詞が日本語の方がその点はラクです。
個人的にはこのアルバムのドラムで最も好きな曲。もうグルーヴは快適だわ,フィルがカッコいいわ,リラックスしたラフな感じが出ているわ,そのくせ細部ではしっかり几帳面な小技も効いてるわ,そして他の楽器のフレーズや音域をしっかり活かしたおかもっちスタンスもばっちり守られているわ,で,もう最高です。とにかく聴いてて非常に気持ちいい!!
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