Peanuts FAQ: 4. 登場人物 (24) フットボール・ギャグ
原著者: デリック・バング(Derrick Bang)
和訳:PFJW(Peanuts FAQ Japanese Workshop)
4.24) フットボール・ギャグ
(訳: Charn)
かわいそうな我らがチャーリー・ブラウンが関わっているシリーズ化したジョークのうち,もっとも豊かで長い歴史を持つもの…それは彼のフットボールを蹴ろうという試みでしょう。
毎年秋以降は,ハロウィーン,感謝祭,クリスマス,そしてルーシーの,チャーリー・ブラウンをもう一度試すように説得する最新の巧妙な計略…そして,さらなる失敗に対する同様に創造的な言い訳が登場します。
わずかな例外を除いては,これらの日曜版の作品は 1950 年代の終わり頃にこのコミックが本調子となって以来ずっと毎年 9 月か 10 月に登場しています。
何十年もに渡って何十通りもの言い訳を描きつづけてきたこと・・・おそらく,それが,シュルツ氏が何年か,たまにちょこちょことこのネタを飛ばした理由なのでしょう。私たちは彼を,毎年新しいジョークを提供しなかったことで責めることなど出来るでしょうか??? それにしても,全くのところ,どのようにこのギャグは始まったのでしょう?信じられないかもしれませんが,なんとそれはルーシーではなくヴァイオレットから始まったのです。
そう,チャーリー・ブラウンのまさに最初の失敗キックは,1951 年11 月 14日付の日刊紙でのコミックで,ヴァイオレットが彼のためにボールを押さえているときに起きたのです。
彼女は,明らかにチャーリーが誤って彼女の手を蹴ってしまうのではないかと心配したため,最後の一瞬に,「私,最後までできないわ!」 と言ってボールを体ごと引っ込めてしまいます。
お疑いなら,Peanuts に収録されたこのコミックをご覧あれ。
ルーシーの関与は,まだ単行本には未収録の 1952 年 11 月 16 日付の日曜版のコミックで始まりました。ここでは,ルーシーが初登場して間もなくのことで,この頃彼女はまだチャーリー・ブラウンより何歳か年下のようにみえます(というより,年下です)。
このことを別にすれば,すべての伝統的な要素はきちんと揃っていました…そして,ルーシーは彼女が最後の瞬間にフットボールを引っ込めたとき,「あなたの靴が汚いんじゃないかって思ったのよ」 と説明しています。
そしてこの概念は,ルーシーが 「成長」 し,チャーリー・ブラウンと対等な立場になったあとの 1956 年 11 月 16 日に,はじめて毎年恒例の主要行事となったのです。
このコミックから始まって,それからほとんど毎年,私たちはチャーリー・ブラウンの失敗に対するまた別のすばらしい理由を与えられてきたのです。
これらのコミックの日付入りリストを,チャックの背中が地面につく不名誉を負う理由を添えて下に紹介します。
特に記載の無いものについては,話し手は常にルーシーだとお考え下さい。
- 「(もう一度挑戦したら) 100 万ドルあげるわよ。」(1956 年 12 月 16 日 -- いうまでもなく,彼女はあげませんでしたが。)
- 「私,別人になったのよ。これが信頼できる顔に見えない?」(1957 年 9 月 22 日)
- 「私,あなたに保証書をあげるわ。」(1958 年 9 月 21 日)
- 「あなた,信頼することを学ばなきゃだめよ。」(1959 年 10 月 4 日)
- 「確率は今やあなたに有利なのよ!!」(1960 年 10 月 16 日)
次は,チャック自身が,ルーシーのボールを引っ込める行動を見定めるために最後の瞬間に体を引きます。この行動に,ルーシーは言います。「これからずっとだれも信頼しないの?」 そこで彼は,今度は本気で挑戦し,予想通りの結果に終わります。(1961 年 9 月 10 日)
チャーリー・ブラウンが自分でこのおなじみの繰り返しの輪の中にはまってしまいます。「今度は彼女が知っていることを僕が知っているって彼女は知っていて….。」(1962 年 9 月 30 日)
- 「女性の握手に法的拘束力なんてないのよ。」(1963 年 9 月 8 日)
- 「この書類には奇妙な点があるわ…公証人を通して作成されなかったのよ。」(1964 年 10 月 4 日)
- (ルーシーは居眠りをしているようにみえる。)「私たち熱狂者って眠りが浅いものなのよ,チャーリー・ブラウン。」(1965 年 10 月 17 日)
- 筋肉けいれんを起こしてボールが急に動いてしまいます。まさに「100 億分の 1 の確率でしかおこらない」筋肉けいれんです。(1966 年 9 月 25 日)
- ルーシーは驚かせることがある,と約束します。結果は同じですが,彼女はその後で,「すぐ再生してどんなふうに見えるか見たくない?」と言います。(1967 年 10 月 1 日)
- 「私の目の中の純真さを見て。」(1968 年 9 月 29 日)
- (ルーシーは彼の信用のなさに泣く。)「女の涙を信じないことね,チャーリー・ブラウン。」 (1969 年 9 月 28 日)
- 「神様,いつまで続くんですか?」チャーリー・ブラウンは泣き叫び,背中は地面へ。「いつまで?一生よ,チャーリー・ブラウン…死ぬまでね。」(1970 年 10 月 11 日)
- 「今年のフットボールはウーマン・リブのご好意により,あなたから引っ込められました。」(1971 年 9 月 26 日)
- チャーリーは,ルーシーの精神分析医のブースでアドバイスを求めることによって,自分の賭けに予防線をはろうとするのですが…。「あいにくね,チャーリー・ブラウン,あなたの平均的な精神分析医はフットボールをキックすることに関してはほとんど何も知らないのよ。」(1972 年 10 月 8 日)
- ルーシーは「人生において確かである 3 つのことって何かわかる?」というなぞなぞでチャーリーを惑わします。チャーリーは走りながら考えます。「死と税金と,それから…。」(1973 年 11 月 11 日)
- ルーシーはチャーリーに,成功を保証する劇のあらすじのような進行表を見せるのですが….。「どんな進行表もね,チャーリー・ブラウン,最後の数分で必ず変更があるものよ。」(1974 年 10 月 13 日)
- ルーシーはチャーリーに,彼が自分のおかあさんを含めて,すべての女性を信用していないと責め立てます。「私はあなたのおかあさんじゃないわ,チャーリー・ブラウン。」(1975 年 10 月 19 日)
- ルーシーはチャーリーに,ボールは引っ込めるつもりだと言っているのに,彼は聞いていないようです。「男っていつも女が言うことをほんとに聞かないのね。」(1976 年 9 月 12 日)
- 「とにかく私の目を見て」(しかし,ルーシーはサングラスをかけている。)(1977 年 10 月 9 日)
- 彼女は彼が走り始める前にバナナを 1 本あげます。このことがまずチャーリーを困惑させます。「バナナってカリウムをたくさん含んでいるのよ,チャーリー・ブラウン。筋肉の回復に役立つわ。」(1978 年 10 月 17 日)
1979 年,チャーリー・ブラウンは手術のために入院する羽目になります。発作的な絶望の中,ルーシーはもし彼がよくなったら次はフットボールを引っこめないと約束します。そして,彼は明らかによくなり,近所の子どもたち全員が結果を待ちます。この数週にわたる「短編小説」のクライマックスとなる1979 年 8 月 2 日付のコミックで,彼女はボールを引っ込めませんでしたが・・・チャリー・ブラウンは失敗し,代わりに彼女の腕を蹴っ飛ばしてしまうのです!
しかし,この翌年にはもう,ルーシーは彼女のいつものいたずらを発揮します。「『あらゆるものには時がある』のよ・・・そして,このフットボールを引っ込める時もね。」(1980 年 11 月 16 日)
- 「またよ,チャーリー・ブラウン,そしてまた,それからまた,そしてさらにまた。」(1981 年 11 月 29 日)
- ルーシーはあいまいに象徴主義に関してつぶやきます。しかし彼女はやはりボールを引きます。「とにかく,僕には象徴主義はとらえられないよ。」「あなた,ボールもとらえられなかったわね,チャーリー・ブラウン。」( 1982 年 10 月 10 日)
ちょっとしたクライマックスのように見えるもの:チャーリー・ブラウンは反発し,次のことを断固として言いながら歩いていってしまいます。「僕は君が僕のことをまた君のいたずらに引っかかるようなマヌケだって思ってる世界でただ一人の人間で嬉しいね。」しかし,最後のコマで,彼はスヌーピー,ウッドストック,サリー,ペパーミント・パティ,マーシーの 5 人がみなそれぞれに支えているフットボールを見るのです。このコミックは,I'm Not Your Sweet Babboo の裏表紙(なぜか収録はされていない)と,You Don't Look 35, Charlie Brown で見ることが出来ます。( 1983 年 10 月 16 日)
そして,その後数年間,まさにこれでおしまいになってしまったかのようでた。1984 年と 1985 年は,この年中行事を見ることはありませんでした。しかし,パターンは少々変わるものの,1986 年にまた例の策略は復活します。その後は,引っ掛けられてボールを蹴ろうと試す羽目に陥るのではなく,チャーリー・ブラウン自身がただ単に,この毎年恒例の屈辱の儀式に,毎週日曜日に教会に行くように,それがあたかの義務であるかのように取りかかります。
その言い訳やルーシーの発言は,より内省的かつ哲学的になりました。
- 「一年中ある特別な瞬間を楽しみにしていて,その瞬間がこれだってわかる前に,すべてが終わっちゃう。」( 1986 年 10 月 19日)
- (ルーシーは携帯カレンダーをチェックする。)「これがあなたになんとか都合をつけられる唯一の時ね。」( 1987 年 10 月 4 日)
- 「悲しいことね…結局人生における万事は繰り返しにすぎないのよ。」( 1988 年 10 月 23 日)
- 「年月がどんなふうに過ぎ去っていくか考えてごらんなさいよ,チャーリー・ブラウン…なんのキケンも冒さないような人生を送ったらどれほど後悔するだろうって考えてみなくっちゃ。」( 1989 年 10 月 1 日)
- 「私,ボールの支え方について書いた本を読んだのよ」とルーシーははじめの方のコマで主張します。しかし,その後…。「私がこの本を書いたのよ,チャーリー・ブラウン。」( 1991 年 9 月 29 日)
- 「発見したわ」サリーがこの毎年恒例の儀式を見てコメントをします。「愛って人に妙なことをさせるものなのね。」「愚かさも同様さ。」彼女の兄であるチャーリーは,妹にその違いを理解して欲しくて説明します。(1992 年 11 月 11 日)
- ルーシーが自慢げに,新品のボールを見せます。しかし…「もしあなたが蹴っちゃったら,もう新品じゃなくなっちゃうって急に思いついたのよ。」(1993 年 10 月 3 日)
- 「ある一人の人を同じいたずらでどれだけ引っ掛けられると思う?」 画面外のルーシーに向かって,サリーが兄が外を歩いているのを見ながら尋ねます。数コマ後,サリーはつぶやきます。「何度でも,なのね?」( 1994 年 10 月 16 日)
- 「もし彼女がボールを引いたら,」チャーリー・ブラウンが約束します,「訴えてやる。」最後のコマで世界的に有名な弁護士に扮したスヌーピーが登場し,予期せぬ展開ですが,私たちは彼が失敗するところを見ることはないのです!(もっとも,成功するところも見ないのですが。)( 1995 年 10 月 29 日)
- 「象徴主義よ,チャーリー・ブラウン!ボール!欲求!勝利!すべてがそこにあるわ!」( 1996 年 10 月 20 日)
- 「人は変わり…時は移る…あなたはそれを空中で感じることができるわ。」( 1997 年 9 月 21 日)
- 「僕は新たに積極的な態度をとるんだ。」チャーリー・ブラウンが言います。「信じられないわ。」ルーシーが答えます。「あなたは喋りたいようにしゃべるし,歩きたいように歩けるわ。それから,お決まりののち…「だけど蹴りたいようには蹴れないわね。」( 1998 年 11 月 15 日)
- 昼食のために広場から帰らなくてはいけなくなったルーシーはリランにフットボール をたくします。後でリランが家に帰ってくると,ルーシーは結果を知りたがるのですが,「絶対に秘密だね」と,この小さな坊やは答えます。すっかりルーシーは欲求不満です。(そして,私たちにも結果はわかりません!)(1999 年 10 月 24 日)
そして,ここでそれは終わったのです。だから私たちは,我らがチャックが実際に最後の試みに 「成功した」 のかどうか,まだわからないままなのです。